2014年4月 7日

満開猫 春の心


     
0402桜1100.jpg                                            26.4.2 東京都清瀬市

  天候の定まらない春のはじめから、 固い蕾の息づかいに耳を澄ますようにして
  待っていた桜が、今満開です。

     
0402桜1073.jpg                                            26.4.2 東京都清瀬市

     
0402ひまわり君1556.jpg                      “ コウエンモ カワノツツミモ キレイダヨ ”

    庭のお客、散歩猫のヒマワリ君も、背中に桜を乗せて来たりします


  急に寒くなったり、初夏の陽気になったりと、春の空が気まぐれなのは、
  実は珍しいことでもないようです。

     
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                                            26.4.2 東京都清瀬市

      世の中にたえてさくらのなかりせば
      春の心はのどけからまし
     (世の中にもしも桜というものがまったくなかったなら、
      春の心はもっとのどかでありましょうに)
                       『古今和歌集』53 在原業平
                       

  というのは、具体的な懸念には全く触れずに、しかしこの季節の桜への気遣い
  が並々ならぬことを伝えて余りあります。

    
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                                            26.4.6 東京都清瀬市

  業平の気遣いの中にはもちろんお天気に関わる心配も少なくなかったでしょう。


     
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                                          山桜 26.4.6 東京都清瀬市

  雨風の心配を率直に表した歌は、業平の時代にも下った時代にも同様にあります。

      吹く風にあつらへつくるものならば
      この一本(ひともと)は避(よ)きよと言はまし
     (吹く風に注文をつけるとするなら、
                この一本の桜だけは避けて吹けと言いたい)
                     『古今和歌集』99 よみ人しらず

      咲く花を散らさじと思ふ
      御吉野(みよしの)の心あるべき春の山風
     (咲いている花を散らすことはあるまいと思う。
                思いやりのあるはずの御吉野の春の山風は)
                 「文禄三年御吉野山御会御歌」徳川家康 


  歌にはその時々の違った目的もあり、また、それぞれの良さがあるとはしても、
  業平の趣味が格別に高尚に見えることは確かでしょう。

     
0406山桜2609.jpg                                          山桜 26.4.6 東京都清瀬市

  もしこの世に桜がなかったとしたら、という突飛な仮定を設けて歌の内容を一気に抽象化することによって、桜を廻るさまざまの思いは何一つ省かれることなく、従って、どのように具体的に表したものよりも内容多く、豊かに一首の中に収まっているのです。

          
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  この歌が春の桜の歌の代表として、千年を越えて愛唱されて来たのはもっともな
  ことでしょう。

     
0405山桜2483.jpg                                         山桜 26.4.5 東京都清瀬市

  満開の花を見ながら、「のどけ」くない春の心は、やはりもう桜とのお別れが
  近いことを悲しく思い始めています。

      散ればこそいとど桜はめでたけれ
      憂き世になにか久しかるべき
     (惜しまれて散るからこそ、桜は なお一層素晴らしい。
      そもそも、この世に永続するものなど何もないのです)
                          『伊勢物語』八十二段 

          
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                                            26.4.5 東京都清瀬市


     

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