春の雪猫
24.3.1 東京都清瀬市
24.3.1 東京都清瀬市
二月二十八日夜から翌日午前中にかけて、関東一帯は大雪になりました。
みやもひたちも見慣れない外の明るさに、その日は窓に寄って過ごすことが多かったようです。
庭もこんな雪景色
24.2.29 東京都清瀬市
今年は東京でも雪の多い年になりましたが、この度の雪は湿り気が多く、嵩(かさ)ばって積もったわりにはどんどん解けてゆきます。そして一夜明けて、もう三月。この前の大雪の時とは違って、路面に厚い氷になって残ることもなさそうです。
雪が止んだ一日、ひたちは庭の探検です。
手がパーの形に開くのは 冷たいせいなのでしょうか
一歩一歩に体が沈むのを 踏ん張るせいか
ひたち君 足冷たくないかな
"......!!"
一所懸命すぎて声がありません 返事どころではないのでしょう
何時にない 真剣な表情
みやは家の中から見るので気がすむようです。
もう見るのも飽きたのか いつものお気に入りの場所に戻ってゴロゴロ
雪が降っているあいだ、庭に小鳥の訪れがありません。顔見知りの散歩猫もお家に籠もっているのでしょう、姿を見せてくれません。窓辺で待っていて、スズメやジョウビタキやメジロが庭の木の枝を渡るのにワクワクするみやは、天気の悪い日はつまらなくてならないのでしょう。
" ヤルキ ナシ "
翡翠 24.3.1 東京都清瀬市
ハクセキレイ 24.3.1 東京都清瀬市
アオジ 24.3.1 東京都清瀬市
ダイサギ 24.3.1 東京都清瀬市
立春が過ぎてから降る雪を特に「春の雪」と呼びます。
季節の淡々とした進行の中で、ふと再び冬に引き戻されるかのようですが、このやわらかな温かい雪は、大きく見ればこれも季節の歩みに順当に組み込まれている現象のような気がします。
雪解けのぬかるむ道を お散歩猫です ゆっくり歩いています
降っても長く残らずに消えてゆく。春の雪は古典的にははかないものの表象です。また一方で、これを見ることで却って花咲く春が目前に迫っていることを人が意識する、その不思議な予兆のようでもあります。独特の情感に美しい詩歌が数々残されてまいりました。春の雪降りの時とは、ものみなが目覚める前の、いっときの魔法の眠りのような時間なのかも知れません。
慣れないことをしてくたびれたのか ひたちはそのまま夕方まで起きませんでした
ながめゐし われが想ひに
下草の しめりもかすか
春来むと ゆきふるあした
伊東静雄「春の雪」(『春のいそぎ』所収)より末聯
24.3.2 東京都清瀬市