秋のお彼岸 お参り猫
26.9.26 東京都世田谷区豪徳寺
秋分の日から三日、秋のお彼岸の最後の日になりましたが、お参りに。
世田谷にある曹洞宗の名刹は豪徳寺。彦根藩主井伊家の菩提寺です。
幕末の藩主井伊直弼(1815〜1860)の墓もここにあります。
幕府大老を務め、開国を断行して近代の扉を開くとともに、政策に反対する尊王
攘夷派を苛烈に弾圧した安政の大獄の悪役の顔でも知られました。乱世に身を捧げ
た人です。劇的な生涯は、今日でもさかんに小説や映画に取り上げられていますね。
その境内の一角にある 藩士日下部家の墓所。
代々を祀る墓の右隣に、明治の三筆の一人 日下部鳴鶴(1838〜1922)と
その妻琴子の眠る墓があります。
日下部東作
徳配琴子 の墓
「東作」が名前です。
(墓陰) 清閑院殿鳴鶴徳音居士
貞淑院殿琴徽妙操大姉
墓陰の字は同じく近江の人 巖谷一六(いわやいちろく)の筆です。
彦根藩士であった日下部東作が書の道に専念すると決心するのは、万延元年
(1860)三月三日の桜田門外の変、藩主井伊直直弼の暗殺事件がきっかけでした。
東作の父(養父)も大老とともにこの難に遭って殺害されています。
歴史的な大政奉還(慶応三年 1867)までここから七年。幕藩体制は末期を迎え、
世の中は大きく動き出していました。
(側面)壬戊四月呉昌碩篆
動乱の気配の中、日下部東作が「蘭亭序」に酒を供えて、臨池(=書道)の精進
を誓ったというのは、この桜田門外の変の翌年のことでした。
26.9.26 東京都世田谷区豪徳寺
とかく天候の不順が話題の今年。
「暑さ寒さも彼岸まで」とは、まず間違いのない言い伝えですが、この秋は
言うほどの残暑はありませんでした。
すっと涼しい秋が始まっています。
豪徳寺といえば別名「猫寺(ねこでら)」。
この寺と猫との縁は、寛永年間、井伊家二代目の当主の時代まで遡ります。
その猫縁起(「寛永10年の雨宿り」)は以前ご紹介したことがありました。
以来、猫は大切にされて、この寺にとって特別なものになっています。
三重の塔の二階の高欄にも、こんな猫たちが。
生きているようですが、彫刻です。
そして、境内にひしめく招き猫の大群
この夏も、秋の初めも、しっかり働いてお寺に帰って来たのでしょう。
しかし、いつ来ても、この境内に生きた猫の姿を見ることがありません。
都心近くといっても、渋谷でも新宿でも、神社やお寺の境内には
のんきに遊んでいる猫を見ることが珍しくありません。
むしろ、だいたいいるものです。
よりによって、別名「猫寺」の豪徳寺に遊び猫がいないとはね。
外飼い禁止という都の条例が、完璧に守られている地域なのでしょうか。
それにしても、自由猫もいない地域なのでしょうか。不思議です。
“ ソコハ デモ ネコ イッパイイルンデショ ”
「招き猫」はね。でもお人形だから。
あの御近所には本当のネコいないのかな
“ マネキネコ ッテ コワインジャナイ? ”
どうでしょう 働き者だということしか
猫さんにとってはコワイかな
“ マネキネコノ イルトコニ ハイルト オコルンジャナイ? ”
ううん どうなんでしょう 多分いじわるしないとは思うけれど
間違いなくあのヒトたちのナワバリでしょうね
散歩猫の遊び場は自然に棲み分けがあるらしく、一緒にいる猫はなかよしです。
野原も秋になってきました。
野原に近い散歩道で、きょうはひとりの赤猫ちゃんは少し涼しい風に耳を立てて
小さい秋の声を聞きつけているようです。
26.9.18 東京都清瀬市
26.9.18 東京都清瀬市