グレコちゃんの謎の生活
24.4.10 東京都清瀬市
庭の常連のグレコちゃんは多分ノラ猫ですが、どこか余裕の漂う不思議猫です。
始めて現れたのは二年前の二月の氷雨の降る夜でした。なにぶん見かけは一見ロシアンブルーですから、どこかの飼い猫がたまたまちょっと遠出をして来たのだろうと思われ、そのままこの辺りに居付くとは、その頃は思っていませんでした。
24.4.7 東京都清瀬市
我が家だけでなく御近所のFさん宅にも、家族のミミちゃんやコトラちゃんがするようにあたりまえに猫ドアから入って、ちゃっかりゴハンを食べて行くといいます。
そういう時、ミミちゃんたちはどうしているのかと尋ねたところ、「遠くからそっと見ています」と、のんびりやさしい声でF夫人は仰います。「ここだけではなくて、ほかにも行き場があるようですよ」。
24.4.6 東京都清瀬市
先日の夜八時過ぎ、帰宅途中の車の窓からグレコちゃんと思しき姿を見かけました。
バス停二つほど先の場所にある交番前で、ちょっと離れすぎているかと思われたのでしたが、交番の入り口を背にして、まるで張り番状態のロシアンブルー。その不思議に落ち着いたたたずまいはグレコちゃんでした。
あるいは別猫とすれば、この辺りにグレコちゃんの血族がいるのか。グレコちゃんの出身はこの辺りに関係があるのか。
家に戻って、庭の濡れ縁のいつもの場所を探しましたが、グレコちゃんはいませんでした。呼んでみても、やはりグレコちゃんは現れませんでした。交番にいたのはやはりグレコちゃんだったのだと確信しました。
八重桜 24.4.15 埼玉県所沢市滝の城址公園
" 呼ンダ?"
グレコちゃんは呼ぶと耳聡くやって来ます。口笛を吹いてもやって来ます。
呼ばなくてもやって来ます。往来で行き会っても付いて来ます。
外出先から帰って門を入ると、門に駆け込んで来て庭の方面に向かうグレコちゃんが足元を快速でかすめて行くことがよくあります。そして私たちが居間に入る頃には居間の外の濡れ縁にいて、ガラス越しににこやかに"オカエリナサイ"をするのです。
24.4.7 東京都清瀬市
だいたい利口な猫で、落ち着きがあり、人の言葉をよく理解するようです。
以前家族の留守中に、ひたちが鍵をかけ忘れた重いガラス戸を押し開けて出かけてしまい、一番に帰宅した家族は中途半端に開いたガラス戸に空き巣かと慌てた、という事件がありました。
室内にはグレコちゃん、庭にはみや、ひたちの姿はなし、という状況で、我が家は大騒ぎになったのでした。
みやは家族を見つけて安心したのか、すぐに室内に戻りました。日が暮れて、すっかり夜になっていましたから、ひたちの捜索は困難が予想されました。
" ヒタチクン オ外ニ 行キタガッテルカラネ "
闇の中に時折鈴の音がして、遠くには行っていないらしいのですが、ひたち本人はすぐには帰りたくないらしく、呼ぶと小さく返事をしては逃げるという始末。日頃外に出たことのない猫なので、猫付き合いを知らず、交通事故も心配で、家族総出で御町内を騒がせたのでした。その時も、グレコちゃんは私たちに付いて回り、結局ひたちを見つけてくれたのもグレコちゃんでした。
"トオクニナンカ イカナイデショー シンパイシスギダヨー"
このたび交番の前の立ち番姿を見かけて、ふとあのときのことを思い出しました。ひたちが開け放して行った戸から入って、留守番をしていたような格好でしたが、交番所属、だったらそうもあるかもしれません。家出猫捜索もしてもらいました。桜の代紋背負って「地回りの猫」というのか。
24.4.15 東京都清瀬市