墨場必携:和歌
22.5.1 東京都清瀬市
このたびは近世(江戸時代)の作品から御紹介します。
新樹
ふかみどりさくらにふくも今はまた
風なつかしき夏木立かな
本居宣長「鈴屋歌集」
22.5.1 東京都清瀬市
菖蒲
花の香はたちかへてける袖の上に
あやめぞかをる軒の朝露
橘千蔭「うけらが花」
あやめ
あやめふく例[ためし]たえねば都辺[みやこべ]に
花咲きうづむ沼もありけり
上田秋成「藤簍冊子」
555.9 22.5.9 東京都清瀬市
かきつばたををりて人におくらんとて
手づからもてまうで行けるに
杜若[かきつばた]しほれやすると
道すがら袖に日かげをへだてゝぞこし
小澤蘆庵「六帖詠草」
22.5.16 東京都清瀬市
いとながき日のつれづれなるに
おぼえずうちねぶるほど、かをる香に
おどろきたれば、桐の花なりけり
みどりなる広葉がくれの花散りて
すずしくかをる桐の下かぜ
小澤蘆庵「六帖詠草」
22.5.1 東京都清瀬市
新樹の風になびくを
きのふまで花にいとひし心さへ
青葉にかはる風のいろかな
小澤蘆庵「六帖詠草」
水青きみ池にたゝむ木々の色を
うつすばかりのことのはもがな
小澤蘆庵「六帖詠草」
※第五句 もがな:〜があればいい の意味の終助詞
下の句は、「木々の色の美しさを言い表せるだけの言葉が
あったらいい(そんな表現が思いつかないほど、実景は美しい
の意)」
卯花似月
卯の花のさけるあたりは心せよ
月夜よしとて人もとひけり
小澤蘆庵「六帖詠草」
村雨のふりて過ぎぬる山見れば
夏のけしきにはやなりにけり
亮々遺稿「木下幸文」
22.5.8 東京都清瀬市