2010年5月19日

墨場必携:和歌

          
1midori .jpg                                            22.5.1 東京都清瀬市

このたびは近世(江戸時代)の作品から御紹介します。

   新樹

   ふかみどりさくらにふくも今はまた
   風なつかしき夏木立かな
                  本居宣長「鈴屋歌集」

         
1緑3.jpg                                            22.5.1 東京都清瀬市

   
   菖蒲

   花の香はたちかへてける袖の上に
   あやめぞかをる軒の朝露
                  橘千蔭「うけらが花」

   あやめ

   あやめふく例[ためし]たえねば都辺[みやこべ]に
   花咲きうづむ沼もありけり
                  上田秋成「藤簍冊子」


     
555.99黄菖蒲.jpg                                           22.5.9 東京都清瀬市


   かきつばたををりて人におくらんとて
   手づからもてまうで行けるに

   杜若[かきつばた]しほれやすると
   道すがら袖に日かげをへだてゝぞこし
                  小澤蘆庵「六帖詠草」

    
16あやめ.jpg                                            22.5.16 東京都清瀬市


   いとながき日のつれづれなるに
   おぼえずうちねぶるほど、かをる香に
   おどろきたれば、桐の花なりけり

   みどりなる広葉がくれの花散りて
   すずしくかをる桐の下かぜ
                  小澤蘆庵「六帖詠草」

     
1ヒメリンゴ.jpg                                           22.5.1 東京都清瀬市


   新樹の風になびくを

   きのふまで花にいとひし心さへ
   青葉にかはる風のいろかな
                  小澤蘆庵「六帖詠草」

   水青きみ池にたゝむ木々の色を
   うつすばかりのことのはもがな
                  小澤蘆庵「六帖詠草」
  ※第五句 もがな:〜があればいい の意味の終助詞
   下の句は、「木々の色の美しさを言い表せるだけの言葉が
   あったらいい(そんな表現が思いつかないほど、実景は美しい
   の意)」

  

   卯花似月

   卯の花のさけるあたりは心せよ
   月夜よしとて人もとひけり
                  小澤蘆庵「六帖詠草」

   村雨のふりて過ぎぬる山見れば
   夏のけしきにはやなりにけり
                  亮々遺稿「木下幸文」

     
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