2010年8月23日

墨場必携:和歌

  この度は残暑の季節柄「扇」を詠んだ歌を集めました。扇は暑い時期を通して用いられたと思われますが、季節のものとしては歌には主に晩夏、また秋の始めに詠まれます。実用の具であるとともに、別れの際の贈り物には季節を問わず選ばれることも多かったようです。「扇=あふぎ」の「あふ」は「会ふ・逢ふ」に通じます。当時の人は扇の贈り物に再会の願いを込めたのです。歌では勿論掛詞で詠まれることもありました。

         
14コスモス2.jpg                                           22.7.14 東京都清瀬市

  納涼

   晩夏
   夏はつるあふぎとあきのしらつゆと
   いづれかさきにお[置]かんとすらん
             『和漢朗詠集』169
             『新古今和歌集』283 壬生忠岑

          
15羽黒.jpg                                           22.8.15 東京都清瀬市


   おほかたの秋くるからに身にちかく
   ならす扇の風ぞすずしき
             『後拾遺和歌集』237


   うたたねのあさけの袖にかはるなり
   ならす扇のあきのはつ風
             『新古今和歌集』308  式子内親王


   手もたゆくならす扇のおきどころ
   わするばかりに秋風ぞふく

             『新古今和歌集』309  相模


   風かはるなつの扇は手になれて
   袖にまづ置くあきのしらつゆ
             『新後拾遺和歌集』290  俊成女


          
13萩.jpg                                           22.8.13 東京都清瀬市


   夏は扇冬は火をけに身をなして
   つれなき人によりもつかはや
             『拾遺和歌集』1187  詠み人知らず

          
1地蔵尊.jpg                                           22.8.1 埼玉県所沢市


 たび[旅]にまかりける人に、扇つかはすとて

   そへてやる扇の風し心あらば
   わが思ふ人の手をなはなれそ
             『後撰和歌集』1330 詠み人知らず

   ※末句:副詞「な」〜禁止の終助詞「そ」で、〜しないでくれるな。
    「手をなはなれそ」は「手を離れないでおくれ」


 物へまかりける人に、むまのはなむけし侍りてあふぎつかはしける

   わかれぢをへだつる雲のためにこそ
   扇の風をやらまほしけれ
             『拾遺和歌集』311 大中臣能宣


   きみがゆく船路にそふる扇には
   こころにかなふ風も吹かなむ
             『新千載和歌集』744  中務

          
18水辺.jpg                                           22.8.18 東京都清瀬市

   
16六日町ミミ.jpg     新潟の親戚宅の庭に現れた御近所猫です。
     我が家のはす向かいのF家のおっとりミミちゃんに似ていて驚きました。
     よく見れば、こちらの方はやんちゃそうです。

   
16六日町ミミ2.jpg                      こんにちは
            " ダレ?"
           


【文例】 散文

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