2009年7月18日

墨場必携:訳詩・近現代詩 青の時間  ラ・クール

27ha虫.jpg                                             21.6.27 東京都清瀬市

 青の時間  ラ・クール
       山室静訳


   小鳥の喉のように青く
   満潮の水は揺れている
   さっきまで汚れて濁っていた
   埠頭に向かって歌いながら。
   太陽の反射が
   肌の下に温かみを目ざまして
   いま石たちは息づく
   すずしげな露の青さに。

   橋の上の人々は
   輪郭を見せて立っている
   高々とした空間に向かって
   花束のように花咲きながら。
   そして私は気づかない
   私自身の手が
   生き生きとして脆く
   泡のように透きとおっているのに。

   松脂の流れにかつて捕らわれて
   その琥珀の中にとじこめられている
   一匹の羽虫のように
   一つぶの固く清らかな滴として
   私はこの日の深い
   光り輝く時間の中で休息する、
   なにかの宝石の中に
   忘れられ、とじこめられて。


 大漁  金子みすず

   朝焼け小焼けだ大漁だ
   オオバいわしの大漁だ

   浜は祭りのようだけど
   海の中では何万の
   いわしの弔いするだろう


【文例】 唱歌・童謡

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