2009年11月20日

墨場必携:和歌



17紅葉.jpg                                           21.11.18 東京都清瀬市

  是貞皇子の家の歌合によめる
   久方の月の桂も秋はなほ
   もみぢすればや 照りまさるらむ
           『古今和歌集』194 壬生忠岑
 
   紅葉せぬ ときはの山は
   吹く風のおとにや秋をききわたるらむ
           『古今和歌集』251  紀淑望

   秋は来ぬ 紅葉はやどにふりしきぬ
   道ふみわけてとふ人はなし
           『古今和歌集』287 よみ人しらす 


    道しらばたづねもゆかむ
   もみちばを幣[ぬさ]とたむけて秋は去[い]にけり
           『古今和歌集』313 凡河内躬恒


   もみぢ葉を風にまかせて見るよりも
   はかなきものは命なりけり
           『古今和歌集』859 大江千里


   玉かつら葛木山[かづらぎやま]のもみぢ葉は
   おもかげにのみ 見えわたるかな
           『後撰和歌集』391 紀貫之


   もみぢ葉は散る木[こ]のもとにとまりけり
   過(ぎ)行く秋やいづちなるらむ
           『後撰和歌集』38  詠み人知らず


   たに川[かは]にしがらみかけよたつた姫
   みねのもみぢにあらし吹くなり
           『金葉和歌集』 247  詠み人知らず


        
15川紅葉.jpg                                           21.11.15 東京都清瀬市



   秋風の吹きあげにたてる白菊は
   花かあらぬか浪のよするか   
           『寛平御時菊合』(寛平初年 889 頃)8菅原道真

   この花に花つきぬらし
   せきかはの絶えずもみよと折[を]れる菊の枝[え]
           『寛平御時菊合』10

   ちりはてて花なきときの花なれば
   うつろふ色の惜[を]しくもあるかな
           『寛平御時内裏菊合』1

   いまよりはまたさく花もなきものを
   いたくなおきそ  菊のうへの露
           『新古今和歌集』509  源定頼

  ◎菊はこれがその年咲く最後の花として詠まれることが多かったよう
   である。

         
7秋.jpg                                           21.11.7 東京都清瀬市



   うゑしうゑば秋なき時やさかざらむ
   花こそちらめ根さへかれめや
           『古今和歌集』268  在原業平


   久方の雲のうへにて見る菊は
   あまつほし(星)とぞあやまたれける 
           『古今和歌集』269  藤原敏行


   露ながらをりてかざさむ菊の花
   おいせぬ秋のひさしかるべく
           『古今和歌集』 270  紀友則


  仙宮に菊をわけて人のいたれるかたをよめる
   ぬれてほす山路[やまち]の菊のつゆのまに
   いつかちとせを我はへにけむ
           『古今和歌集』273  素性法師
           (『寛平御時菊合』17)


   山人[やまびと]のをる袖にほふ菊のつゆ
   うちはらふにも千代はへぬべし
          『新古今和歌集』719  藤原俊成

  ◎菊を愛好する趣味は中国の老荘思想に関係が深く、神仙譚に
   よく馴染む。不老長寿や不死の世界とも連絡し、幻想的、
   物語的な詩歌で詠まれることも多い。菊酒、菊の露などは実際に
   延命長寿に利くとされ、我が国でも、菊花は長寿の祝(賀の祝)
   の決まりものであった。

          
15島1.jpg                                           21.11.15 東京都清瀬市



  世中のはかなきことを思ひけるをりに
  きくの花を見てよみける
   秋の菊にほふかぎりはかざしてむ
   花よりさきとしらぬわが身を
           『古今和歌集』276  紀貫之


  いのりつつ なほ長月の菊の花
  いづれの秋かうゑて見ざらむ
           『新古今和歌集』718  紀貫之

【文例】 唱歌・童謡

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