2009年3月15日

墨場必携:唱歌・童謡


  あふげば尊し  『小学唱歌集(三)』(明治17年)

  1 あふげば 尊[たふと]し わが師の恩
    教への庭にも はやいくとせ
    思へばいと疾[と]し このとし月
    今こそわかれめ いざさらば

  2 互ひにむつみし 日ごろの恩
    わかるる後[のち]にも やよ忘るな
    身を立て名をあげ やよはげめよ
    いまこそわかれめ いざさらば

  3 朝ゆふなれにし まなびの窓
    ほたるのともし火 つむ白雪
    わするる間[ま]ぞなき ゆくとし月
    今こそわかれめ いざさらば

  ※やよ:感動詞。呼びかけの言葉。やあ。
   今こそわかれめ:「め」は助動詞。自分の動作に付いて意志を表す。
           (時が来て)今、私たちは別れよう。さあ、お別れだ、
           の気分を表す。

         
9mejimo.jpg                                      桃にメジロ21.3.9 東京都清瀬市

   蛍の光  『小学唱歌集(初)』(明治14年)

  1 螢のひかり まどの雪
    書[ふみ]よむつき日 かさねつつ
    いつしか年も すぎのとを
    あけてぞけさは わかれゆく

  2 とまるもゆくも かぎりとて
    かたみにおもふ ちよろづの
    こころの端[はし]を ひとことに
    幸[さき]くとばかり うたふなり

 ※螢のひかり まどの雪:「蛍雪の功」。灯火の油が買えなかったので、晋の
             車胤は蛍の光で、孫康は雪明かりで書物を読んだ故事
            (『蒙求(もうぎゅう)』)。
  いつしか年もすぎのとを:「すぎ」は掛詞(かけことば)。月日が過ぎるの
              「過ぎ」と学び舎の門戸の「杉」の戸とを掛けている。
  かたみに:互いに
  幸く:幸くませ。幸せでいらっしゃいますように。
  千万(ちよろづ)の心の端を一言に:胸の中の数え切れないほどたくさんの
                   思いのほんの片端を、一言にこめて。


         
5koubai.jpg                                          紅梅 21.3.5 東京都清瀬市


   おそうじとうばん    与田準一

  耳長丘から かよってる
  うさぎのせいとの うさぎぐみ、
  おそうじとうばん 月曜日。

  ならべたつくえの ちょんちょんちょん
  そろわぬかどを いすのあし
  きちんとおぎょうぎ なおします。
        *
  ぼうぼう山から かよってる
  たぬきのせいとの たぬきぐみ
  おそうじとうばん 火曜日だ。

  うんどうじょうに ちらかった
  かみくず木のくず あつめたら、
  もさずに入れましょ くずかごへ。
        *
  はす池村から かよってる
  子がめのせいとの かめぐみの、
  おそうじとうばん 水曜日。

  いたばりろうか すうとんすう
  ぞうきんがけです よつんばい、
  ぴかぴかきれいに なりました。
        *
  しいのみ山から かよってる
  子りすのせいとの りすぐみの、
  おそうじとうばん 木曜日。

  そろいのしっぽで ぱっぱっぱっ
  ガラスのほこりを はたいたり、
  ほうきになります よいしっぽ。
        *
  いねむり町から かよってる
  子ねこのせいとの ねこぐみの、
  おそうじとうばん 金曜日。

  
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  バケツにちりとり かたづけて
  のぞけばものおき うすぐらい、
  お目々光らしゃ かべにあな。

        *
  じねんじょ村から かよってる
  もぐらのせいとの もぐらぐみ
  おそうじとうばん 土曜日だ。

  学校の中には 花ばたけ
  雨ふりあがりの お天気に、
  くさとり虫とり うれしいな。
        *
  どろどじょ(泥鰌)ぬまから かよってる
  あひるのせいとは 一年生、
  おそうじとうばん まだしない。

  ときどきがっこがっこ お手つだい
  オルガンはこびに 大さわぎ、
  ぺたぺたあしあと ふいとくれ。

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