墨場必携:唱歌・童謡
あふげば尊し 『小学唱歌集(三)』(明治17年)
1 あふげば 尊[たふと]し わが師の恩
教への庭にも はやいくとせ
思へばいと疾[と]し このとし月
今こそわかれめ いざさらば
2 互ひにむつみし 日ごろの恩
わかるる後[のち]にも やよ忘るな
身を立て名をあげ やよはげめよ
いまこそわかれめ いざさらば
3 朝ゆふなれにし まなびの窓
ほたるのともし火 つむ白雪
わするる間[ま]ぞなき ゆくとし月
今こそわかれめ いざさらば
※やよ:感動詞。呼びかけの言葉。やあ。
今こそわかれめ:「め」は助動詞。自分の動作に付いて意志を表す。
(時が来て)今、私たちは別れよう。さあ、お別れだ、
の気分を表す。
桃にメジロ21.3.9 東京都清瀬市
蛍の光 『小学唱歌集(初)』(明治14年)
1 螢のひかり まどの雪
書[ふみ]よむつき日 かさねつつ
いつしか年も すぎのとを
あけてぞけさは わかれゆく
2 とまるもゆくも かぎりとて
かたみにおもふ ちよろづの
こころの端[はし]を ひとことに
幸[さき]くとばかり うたふなり
※螢のひかり まどの雪:「蛍雪の功」。灯火の油が買えなかったので、晋の
車胤は蛍の光で、孫康は雪明かりで書物を読んだ故事
(『蒙求(もうぎゅう)』)。
いつしか年もすぎのとを:「すぎ」は掛詞(かけことば)。月日が過ぎるの
「過ぎ」と学び舎の門戸の「杉」の戸とを掛けている。
かたみに:互いに
幸く:幸くませ。幸せでいらっしゃいますように。
千万(ちよろづ)の心の端を一言に:胸の中の数え切れないほどたくさんの
思いのほんの片端を、一言にこめて。
紅梅 21.3.5 東京都清瀬市
おそうじとうばん 与田準一
耳長丘から かよってる
うさぎのせいとの うさぎぐみ、
おそうじとうばん 月曜日。
ならべたつくえの ちょんちょんちょん
そろわぬかどを いすのあし
きちんとおぎょうぎ なおします。
*
ぼうぼう山から かよってる
たぬきのせいとの たぬきぐみ
おそうじとうばん 火曜日だ。
うんどうじょうに ちらかった
かみくず木のくず あつめたら、
もさずに入れましょ くずかごへ。
*
はす池村から かよってる
子がめのせいとの かめぐみの、
おそうじとうばん 水曜日。
いたばりろうか すうとんすう
ぞうきんがけです よつんばい、
ぴかぴかきれいに なりました。
*
しいのみ山から かよってる
子りすのせいとの りすぐみの、
おそうじとうばん 木曜日。
そろいのしっぽで ぱっぱっぱっ
ガラスのほこりを はたいたり、
ほうきになります よいしっぽ。
*
いねむり町から かよってる
子ねこのせいとの ねこぐみの、
おそうじとうばん 金曜日。
バケツにちりとり かたづけて
のぞけばものおき うすぐらい、
お目々光らしゃ かべにあな。
*
じねんじょ村から かよってる
もぐらのせいとの もぐらぐみ
おそうじとうばん 土曜日だ。
学校の中には 花ばたけ
雨ふりあがりの お天気に、
くさとり虫とり うれしいな。
*
どろどじょ(泥鰌)ぬまから かよってる
あひるのせいとは 一年生、
おそうじとうばん まだしない。
ときどきがっこがっこ お手つだい
オルガンはこびに 大さわぎ、
ぺたぺたあしあと ふいとくれ。