墨場必携:和歌
21.12.2 東京都清瀬市
冬期の試験迫りて夜を更かすこと多くなりぬ
物書けば紙に声あり
小夜中の幽[かそ]けきこゑのかくはさびしき
鉛筆の秀[ほ]はも鈍りてたどたどし
今宵はもはや寝むとこそ思へ
植松寿樹『庭燎』
書
さむけれど見さしの書[ふみ]もあるものを
火も皆きえぬ ねよとなるらん
大隈言道『大隈言道全集』
ねざめせし ちごを夢路にいざなひて
再びたどる文のやまぐち
比田井小琴『をごとのちり』
※大正昭和の女流書家比田井小琴は家庭婦人として7人の子供の母でもあった。
子供を寝かしつけてからがようやく勉強時間に当てられる。深夜まで学書読書
に勤しみ、かつ起床は日の出より早かったという。
女性が家庭を持った上で自分のしたいことをしようとすると、本当に闘わなけ
ればならない相手は社会制度やまして男性などではない。比田井小琴の生活は
それを見事に示して女性学徒に健全な勇気を与える。
21.11.21 東京都清瀬市