墨場必携:訳詩 近現代詩 与謝野晶子
22.9.24 埼玉県所沢市
コスモス(壺の花「小曲十五章」より) 与謝野晶子
一本のコスモスが笑つてゐる。
その上に、どつしりと
太陽が腰を掛けてゐる。
そして、きやしやなコスモスの花が
なぜか、少しも撓(たわ)まない、
その太陽の重味に。
コスモスの花 与謝野晶子
少し冷たく、匂[にほ]はしく、
清く、はかなく、たよたよと、
コスモスの花、高く咲く。
秋の心を知る花か、
うすももいろに高く咲く。
22.9.17 埼玉県所沢市
晩秋の草 与謝野晶子
野の秋更けて、露霜[つゆしも]に
打たるるものの哀れさよ。
いよいよ赤む蓼[たで]の茎、
黒き実まじるコスモスの花、
さてはまた雑草のうら枯れて
斑[まだら]を作る黄と緑。
22.9.20 埼玉県所沢市
無題 与謝野晶子
うす紫と、淡紅色(ときいろ)と、
白と、萠黄と、海老色と、
夢の境で見るやうな
はかない色がゆらゆらと
わたしの前で入りまじる。
女だてらに酔ひどれて、
月の明りにしどけなく
乱れて踊る一むれか。
わたしの窓の硝子[がらす]ごし
風が吹く、吹く、コスモスを。
オ散歩ニ 来マシタ
ひたちに似た散歩猫です。
とぼけた表情で 今日もごきげんよろしく。