墨場必携:訳詩 近現代詩
21.5.2 東京都清瀬市
栴檀 三木露風
せんだんの花のうすむらさき
ほのかなる夕(ゆふべ)のにほひ、
幽(かす)かなる想(おもひ)の空に
あくがれの影をなびかす。
しめり香や、染(そ)みつつきけば
やはらかに忍ぶ音(ね)もあり。
とほつ代のゆめにさゆらぎ
木のすがた、絶えずなげかふ。
ああゆふべ、をぐらく深く、
わがむねをながるるしらべ。
せんだんの花にふるへて、
わがむねをながるるしらべ。
世は闇にはやも満つれど、
たぐひなきあくがれごこち。
消えて身は空になびくか。
せんだんの、あはれなる花のこころよ。
21.5.26 東京都清瀬市
薔薇二曲 北原白秋
一
薔薇ノ木ニ
薔薇ノ花サク。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
二
薔薇ノ花。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
照リ極マレバ木ヨリコボルル。
光リコボルル。
薔薇の誘惑 大手拓次
ただひとつのにほひとなつて
わたり鳥のやうにうまれてくる影のばらの花、
糸をつないで墓上の霧をひきよせる影のばらの花、
むねせまく、ふしぎなふるい甕のすがたをのこしてゆくばらのはな、
ものをいはないばらのはな、
ああ
まぼろしに人間のたましひをたべて生きてゆくばらのはな、
おまへのねばる手は雑草の笛にかくれて
あたらしいみちにくづれてゆきます。
ばらよ ばらよ
あやしい白薔薇のかぎりないこひしさよ。
20.5.20 所沢市西部球場
薔薇 金井直
何かをひたすらつつもうとして
つつむものが無かったことの大きさを
ひろげてみせるように
もうそれ以上はひらけないところで
いくえものはなびらを支えている
(三連のうちの抜粋、第三連)
20.5.20 所沢市西部球場
白ばらの匂う夕べは 原詩作者不詳 訳詩 高橋伸夫
白ばらの匂う夕べは
月も夢を見ている
窓辺のまがきの闇にもほのかに
別れた友の手
ひとりおもう
白ばらの匂う夕べは
月も夢を見ている
※ネーゲリ作曲のメロディーはバイオリンの練習曲などでお馴染み。
知られているロマンティックな訳詩は原詩からは大きく離れたものという。
21.5.20 所沢市西部球場
栴檀 三木露風
せんだんの花のうすむらさき
ほのかなる夕(ゆふべ)のにほひ、
幽(かす)かなる想(おもひ)の空に
あくがれの影をなびかす。
しめり香や、染(そ)みつつきけば
やはらかに忍ぶ音(ね)もあり。
とほつ代のゆめにさゆらぎ
木のすがた、絶えずなげかふ。
ああゆふべ、をぐらく深く、
わがむねをながるるしらべ。
せんだんの花にふるへて、
わがむねをながるるしらべ。
世は闇にはやも満つれど、
たぐひなきあくがれごこち。
消えて身は空になびくか。
せんだんの、あはれなる花のこころよ。
21.5.26 東京都清瀬市
薔薇二曲 北原白秋
一
薔薇ノ木ニ
薔薇ノ花サク。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
二
薔薇ノ花。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
照リ極マレバ木ヨリコボルル。
光リコボルル。
薔薇の誘惑 大手拓次
ただひとつのにほひとなつて
わたり鳥のやうにうまれてくる影のばらの花、
糸をつないで墓上の霧をひきよせる影のばらの花、
むねせまく、ふしぎなふるい甕のすがたをのこしてゆくばらのはな、
ものをいはないばらのはな、
ああ
まぼろしに人間のたましひをたべて生きてゆくばらのはな、
おまへのねばる手は雑草の笛にかくれて
あたらしいみちにくづれてゆきます。
ばらよ ばらよ
あやしい白薔薇のかぎりないこひしさよ。
20.5.20 所沢市西部球場
薔薇 金井直
何かをひたすらつつもうとして
つつむものが無かったことの大きさを
ひろげてみせるように
もうそれ以上はひらけないところで
いくえものはなびらを支えている
(三連のうちの抜粋、第三連)
20.5.20 所沢市西部球場
白ばらの匂う夕べは 原詩作者不詳 訳詩 高橋伸夫
白ばらの匂う夕べは
月も夢を見ている
窓辺のまがきの闇にもほのかに
別れた友の手
ひとりおもう
白ばらの匂う夕べは
月も夢を見ている
※ネーゲリ作曲のメロディーはバイオリンの練習曲などでお馴染み。
知られているロマンティックな訳詩は原詩からは大きく離れたものという。
21.5.20 所沢市西部球場
【文例】 みや・ひたちへ