墨場必携:和歌 花 桜 吉野
染井吉野 22.3.30 東京都清瀬市
み吉野の 耳我の嶺に 時なくぞ 雪は降りける 間無くぞ 雨は振りける
その雪の 時なきがごと その雨の 間なきがごと 隈もおちず 思ひつつぞ来し
その山道を
大海人皇子「万葉集」25
み吉野の 御金が岳に 間なくぞ 雨は降るといふ 時じくぞ 雪は降るといふ
その雨の 間なきがごと その雪の 時じきがごと 間もおちず 我れはぞ恋ふる
妹が直香に
「万葉集」3293
み吉野の象山[きさやま]の際[ま]の木末[こぬれ]には
ここだも騒[さわ]く鳥の声かも
山部赤人「万葉集」924
皆人の恋ふるみ吉野今日見れば
うべも恋ひけり山川清み
「万葉集」1131
み吉野の岩もとさらず鳴くかはづ
うべも鳴きけり川をさやけみ
「万葉集」2161
染井吉野 22.3.21 東京都清瀬市
み吉野の山辺に咲ける桜花
雪かとのみぞあやまたれける
紀友則「古今和歌集」60
み吉野の山の白雪踏み分けて
入りにし人のおとづれもせぬ
壬生忠岑「古今和歌集」327
もろともに をりしはるのみ こひしくて
ひとりみまうき はなさかりかな
読人不知「拾遺和歌集」1039
しらくもにまがふさくらの こずゑにて
ちとせのはるを そらにしるかな
待賢門院中納言「金葉和歌集」66
みよしのの山した風や はらふらむ
こずゑにかへる 花のしら雪
俊恵「千載和歌集」49
山桜 22.3.20 東京都清瀬市
おもひやる心やはなにゆかざらん
かすみこめたるみよしののやま
西行「山家集」63
よし野山こずゑの花を見し日より
心は身にもそはずなりにき
西行「山家集」66
白河の梢を見てぞなぐさむる
吉野の山にかよふ心を
西行「山家集」69
こ(木)のもとにたびねをすれば
よしの山 はなのふすま(衾)をきするはるかぜ
西行「山家集」125
いくとせの はるにこころをつくしきぬ
あはれとおもへ みよしののはな
藤原俊成「新古今和歌集」43
いざさらば よしののやまの やまもりと
はなのさかりは ひとにいはれむ
藤原長方「新後撰和歌集」89
山桜 22.3.31 東京都清瀬市