2009年5月 1日

墨場必携:唱歌 童謡

29mid.jpg                                            21.4.29 東京都清瀬市
 茶摘み

  夏も近づく八十八夜
  野にも山にも若葉が茂る
  あれに見えるは
  茶摘みぢやないか
  あかねだすきに菅[すげ]の笠

  日和[ひより]つづきの今日此の頃を、
  心のどかに摘みつつ歌ふ
  摘めよ 摘め摘め
  摘まねばならぬ
  摘まにや日本の茶にならぬ
             『尋常小学唱歌』(明治45年)

22mid1.jpg                                         21.4.22 東京都清瀬市    

 青葉茂れる桜井の(旧題 湊川)  落合直文

  青葉茂れる桜井の
  里のわたりの夕まぐれ
  木[こ]の下陰[したかげ]に駒[こま]とめて
  世の行く末[すゑ]をつくづくと
  忍ぶ鎧)の袖の上[へ]に
  散るは涙か はた露か

  正成[まさし])涙を打ち払い
  我子正行[まさつら]呼び寄せて
  父は兵庫へ赴かん
  彼方[かなた]の浦にて討死[うちじに]せん
  いましはここまで来つれども
  とくとく帰れ故郷[ふるさと]へ

  父上いかにのたまふも
  見捨てまつりてわれ一人
  いかで帰らん帰られん
  この正行は年こそは
  未[いま]だ若けれ諸共[もろとも]に
  御供[おんとも]仕へん死出の旅

  いましをここより帰さんは
  わが私[わたくし]の為ならず
  己れ討死為さんには
  世は尊氏[たかうじ]の儘[まま]ならん
  早く生い立ち大君に
  仕えまつれよ国の為め

  この一刀[ひとふり]は往[い]にし年
  君の賜ひし物なるぞ
  この世の別れの形見にと
  いましにこれを贈りてん
  行けよ正行故郷へ
  老いたる母の待ちまさん

  共に見送り見返りて
  別れを惜しむ折りからに
  復[また]も降り来る五月雨[さみだれ]の
  空に聞こゆる時鳥[ほととぎす]
  誰れか哀[あはれ]と聞かざらん
  あはれ血に泣くその声を
               (明治32年)

30kosa.jpg                                     コサギ 21.4.30 東京都清瀬市    

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