2010年9月 6日

墨場必携:和歌 秋風

この度は「秋風」の歌を集めました。

          
24秋萩.jpg                                           22.8.24 東京都清瀬市

  真葛原[まくずはら]なびく秋風吹くごとに
  阿太[あた]の大野[おほぬ]の萩が花散る
               『万葉集』2096 作者不詳


  きのふこそ早苗[さなへ]とりしかいつのまに
  いなばそよぎて秋風の吹く
               『古今和歌集』172 詠み人知らず

          
16コシヒカリ.jpg                                       稲穂 22.8.16 新潟県南魚沼市泉田


  女郎花ふきすぎてくる秋風は
  めには見えねどか〔香〕こそしるけれ
               『古今和歌集』232 凡河内躬恒


  秋風にかきなすこと〔こと〕のこゑ〔声〕にさへ
  はかなく人のこひしかるらむ
               『古今和歌集』586 壬生忠岑

         
きのぼりみや.jpg

  さらぬだに物おもふころの夕暮[ゆふぐれ]を
  いかにせよとて秋風の吹く
               『宝治百首(宝治御百首)』1393 帥


  あまつ空きよき夕の秋風に
  山のは〔端〕のぼる月をみるかな
               『宝治百首(宝治御百首)』1562 実氏


  夕さればあまつ空なる秋風の
  行へもしらぬ人を恋ひつつ
               『宝治百首(宝治御百首)』2520 実氏

    ※夕暮は雲のはたてにものぞ思ふ天つ空なる人を恋ふとて
     (『古今和歌集』484詠み人知らず)を本歌とするか
     

          
夕空.jpg                                           19.10.5 東京都清瀬市

  夕波に夏の日数はながれつきぬ
  秋風うかぶ天の川上
               『草根集』2982 正徹


  かざしては夏の日影ぞへだて行く
  秋風いだす月の扇〔あふぎ〕に
               『草根集』3457 正徹 


          
19.9.20月.jpg                                            19.9.20 東京都清瀬市


  久かたの清きみ空の秋風に
  月も光をみがきそふ〔添ふ〕らし
               『内裏歌合』30


  さびしとも誰にかたらむ山里の
  軒端の松の夜半の秋風 
               『影供歌合』48


  荻[をぎ]の葉に露おきまよふ夕暮[ゆふぐれ]は
  とふ〔訪ふ〕べきものと秋風ぞ吹く 
               『建長八年百首歌合』708 


  知られじなおなじ袖にはかよふとも
  たが夕[ゆふ]ぐれとたのむ秋風
               『新古今和歌集』1325 藤原家隆


          
11コスモス2.jpg                                           22.7.11 東京都清瀬市



  いちはやく秋風の音[ね]をやどすぞと
  長き葉めでて蜀黍[もろこし]は植う
               若山牧水『夏を愛する言葉』


         
ヒタ似散歩山道.jpg        
ヒタ似散歩.jpg                   "オ散歩ニ  来テマス"
     ひたちに似たお馴染み散歩猫
     飄々として いつもひとりでいます
     おヒゲに そろそろ秋風を感じているのか


【文例】 散文

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