墨場必携:和歌 賀茂真淵 他
吹く風の心は常にあらめども
夏こそ人にしたしまれけれ
賀茂真淵『賀茂翁家集』
なつかしき夏とはなりぬ
野べは今 さきいづる花の色にかをりに
阪正臣「正臣歌集」『樅屋全集』三
夏
何ごとをなすも日かげの長くして
夏はよきときすてがたきとき
阪正臣「正臣歌集」『樅屋全集』三
夏草
とこなつのさかりのそのに咲きまじる
あをいろすずし月草のはな
阪正臣「樅屋詠草」『樅屋全集』三
21.7.20 東京都清瀬市
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを
雲のいづこに月宿るらむ
清原深養父『古今和歌集』166
すずしさにうたたねすれば 程もなく
はしゐながらに明くる夏の夜
本居宣長『鈴屋百首歌』四
つつめども隠れぬものは
夏虫の身よりあまれる思ひなりけり
『大和物語』『後撰和歌集』
※夏虫:夏に見られる昆虫の総称で広く用いられる。この歌では螢。
ふるさとのみかきが原の夏草に
よるはもえつつ飛ぶ螢かな
賀茂真淵『賀茂翁家集』
空高くほたるをさそふ夕風の
身にしむまでになれる夏かな
賀茂真淵『賀茂翁家集』
夕闇にしのぶの露も顕れて
軒端すずしくとふ螢かな
本居宣長『鈴屋歌集』一之巻
蘆[あし]しげみ葉うらにすがる夏虫の
かくれてもほの見ゆる光は
上田秋成『藤簍冊子(つづらぶみ)』
陽炎[かげろふ]のもゆる夏野の沢水に
よるたつ影は螢なりけり
香川景樹『桂園一枝』
夏花
やみの夜もほたるのかげに照らされて
のべに花さく月見草かな
阪正臣「ちたのはぐさ二」『樅屋全集』二
21.7.26 東京都清瀬市
19.7.31 東京都東村山市
蓮葉のにごりに染まぬこころもて
なにかは露を玉とあざむく
遍昭『古今和歌集』165
しじに生ふる池の蓮[はちす]の花見れば
風も吹かなくに心すずしも
『天降言』田安宗武
なべて世のにごりにそまで
住む人の友と見るべき花ぞこの花
「藤原濱臣が泊洦舎(ささなみのや)にて蓮(はちす)を見る辞」より
『うけらが花』巻七 橘千蔭
はちす葉の上とのみやはあだにみむ
露こそ人の世のたぐひなれ
『琴後集』村田春海
池水のこころきよさもあらはれつ
濁りにしまぬ花のさかりは
『琴後集』村田春海
影うつす池の鏡の清ければ
葉がくれにさく花もみえけり
『琴後集』村田春海
しづまれる華うごかして
夕蛙 はす咲く池をとびくぐるかな
『志濃夫廼舎歌集』橘曙覧
ありときくむねの蓮[はちす]も
池水[いけみづ]のにごりにしめるみにはひらけず
『六帖詠草』小澤蘆庵
いまよりの夕月[ゆふづき]かげに
いかばかり涼しかるらん池の蓮葉[はちすば]
『亮亮遺稿』上 木下幸文
いかばかり涼しき池のこころより
かかる蓮[はちす]の花はさくらむ
『亮亮遺稿』上 木下幸文
月影はとくもこの間を離れなん
蓮[はちす]の上の玉の数見ん
『亮亮遺稿』上 木下幸文
雨中蓮
紅のにほひやあせむ蓮のはな
つぼみにかへれ雨のふるまは
池水のにごりにしまぬ花ぞとも
しらでやあめのふりあらふらむ
阪正臣「樅園詠草」『樅屋全集』二
寄蓮恋
目にはみてをられぬ水の花はちす
かくこそありけれ我が思ふ子も
阪正臣「蛙侶吟稿」『樅屋全集』二
夏こそ人にしたしまれけれ
賀茂真淵『賀茂翁家集』
なつかしき夏とはなりぬ
野べは今 さきいづる花の色にかをりに
阪正臣「正臣歌集」『樅屋全集』三
夏
何ごとをなすも日かげの長くして
夏はよきときすてがたきとき
阪正臣「正臣歌集」『樅屋全集』三
夏草
とこなつのさかりのそのに咲きまじる
あをいろすずし月草のはな
阪正臣「樅屋詠草」『樅屋全集』三
21.7.20 東京都清瀬市
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを
雲のいづこに月宿るらむ
清原深養父『古今和歌集』166
すずしさにうたたねすれば 程もなく
はしゐながらに明くる夏の夜
本居宣長『鈴屋百首歌』四
つつめども隠れぬものは
夏虫の身よりあまれる思ひなりけり
『大和物語』『後撰和歌集』
※夏虫:夏に見られる昆虫の総称で広く用いられる。この歌では螢。
ふるさとのみかきが原の夏草に
よるはもえつつ飛ぶ螢かな
賀茂真淵『賀茂翁家集』
空高くほたるをさそふ夕風の
身にしむまでになれる夏かな
賀茂真淵『賀茂翁家集』
夕闇にしのぶの露も顕れて
軒端すずしくとふ螢かな
本居宣長『鈴屋歌集』一之巻
蘆[あし]しげみ葉うらにすがる夏虫の
かくれてもほの見ゆる光は
上田秋成『藤簍冊子(つづらぶみ)』
陽炎[かげろふ]のもゆる夏野の沢水に
よるたつ影は螢なりけり
香川景樹『桂園一枝』
夏花
やみの夜もほたるのかげに照らされて
のべに花さく月見草かな
阪正臣「ちたのはぐさ二」『樅屋全集』二
21.7.26 東京都清瀬市
19.7.31 東京都東村山市
蓮葉のにごりに染まぬこころもて
なにかは露を玉とあざむく
遍昭『古今和歌集』165
しじに生ふる池の蓮[はちす]の花見れば
風も吹かなくに心すずしも
『天降言』田安宗武
なべて世のにごりにそまで
住む人の友と見るべき花ぞこの花
「藤原濱臣が泊洦舎(ささなみのや)にて蓮(はちす)を見る辞」より
『うけらが花』巻七 橘千蔭
はちす葉の上とのみやはあだにみむ
露こそ人の世のたぐひなれ
『琴後集』村田春海
池水のこころきよさもあらはれつ
濁りにしまぬ花のさかりは
『琴後集』村田春海
影うつす池の鏡の清ければ
葉がくれにさく花もみえけり
『琴後集』村田春海
しづまれる華うごかして
夕蛙 はす咲く池をとびくぐるかな
『志濃夫廼舎歌集』橘曙覧
ありときくむねの蓮[はちす]も
池水[いけみづ]のにごりにしめるみにはひらけず
『六帖詠草』小澤蘆庵
いまよりの夕月[ゆふづき]かげに
いかばかり涼しかるらん池の蓮葉[はちすば]
『亮亮遺稿』上 木下幸文
いかばかり涼しき池のこころより
かかる蓮[はちす]の花はさくらむ
『亮亮遺稿』上 木下幸文
月影はとくもこの間を離れなん
蓮[はちす]の上の玉の数見ん
『亮亮遺稿』上 木下幸文
雨中蓮
紅のにほひやあせむ蓮のはな
つぼみにかへれ雨のふるまは
池水のにごりにしまぬ花ぞとも
しらでやあめのふりあらふらむ
阪正臣「樅園詠草」『樅屋全集』二
寄蓮恋
目にはみてをられぬ水の花はちす
かくこそありけれ我が思ふ子も
阪正臣「蛙侶吟稿」『樅屋全集』二
【文例】 散文へ