墨場必携:和歌 御歌所春初夏の和歌
*印は御歌所寄人
21.4.30 東京都清瀬市
あさみどりすみわたりたる大ぞらの
ひろきをおのがこゝろともがな
明治天皇御製
小車はいまや堤にかかるらむ
ほろのうへする(擦る)青柳の糸
中村秋香*
22.4.25 東京都清瀬市
桃のかほ柳のすがたはるのいろの
いづれおとらぬなつかしさかな
阪正臣*
春紫苑 22.5.5 東京都清瀬市
さむからぬ風にふかれていけどのゝ
おばしまによる春の暮れ方
阪正臣*
22.5.8 東京都清瀬市
にはさくらにほひし春はゆめとなりて
目さむばかりになでしこの咲く
阪正臣*
にはとりのあさる垣根のちり塚に
菜の花さけり小山田[をやまだ]の里
蒲田正夫*
新樹
家々の隔ての垣もうづもれて
若葉つゞきのむつましげなる
大口周魚*
21.4.30 東京都清瀬市
野菫
つみいるゝ野辺のすみれの花かたみ
かたみにきそふ里のをとめ子
冷泉為紀*
※花かたみ:かたみは筐(かご=籠)のこと。花筐(はなかご)。
※かたみに:副詞「互いに」
第3句の「花かたみ」に同音の副詞を続けて、同音反復のリズム効果が現れている。
和田草 22.4.18 東京都清瀬市
菫
桜花散りしく野辺のつぼ菫
色うちさえて摘みなむも惜[を]し
はるの日の春日の野辺に今日もかも
里の少女[をとめ]ら菫摘むらむ
田安宗武「天降言」
22.5.5 東京都清瀬市
21.4.30 東京都清瀬市
春の野に遊ぶ
しろたへの袖ふりはへて
かげろふのもゆる芝生に菫摘むなり
橘千蔭「うけらが花」一巻
をとこ女野にいでて菫つむ
いくとせの春か摘みけむ
同じ世にすみれの草の名のみたのみて
橘千蔭「うけらが花」一巻
22.5.1 東京都清瀬市
菫草
あすもこむ菫はなさく春の野の
芝生がくれに雉子[きゞす]なくなり
上田秋成「藤簍冊子」
すみれ
きゞしなく(雉子鳴く)こせ(巨勢)の春野のつぼすみれ
摘みてをゆかむ日はくれぬとも
すがのねの長き春日を春の野に
すみれつみつゝくらしつるかも
本居宣長「鈴屋歌集」四
21.3.27 東京都清瀬市
すみれ
いざさらば春の野守[のもり]にやどか(借)らむ
ともにすみれの花になれつゝ
村田春海「琴後集」
菫
あかずしてくるゝ春野の露ながら
つめるすみれに月ぞうつろふ
紫のすみれの花のにほへばや
なべて春野のあかずみゆらん
小澤蘆庵「六帖詠草」
20.4.4 東京都清瀬市野塩昭和薬科大学
菫
朝露のひるげをはこぶ里の子も菫つむなり野べの細道
昭憲皇太后
庭菫
里の子につませてしがなわが庭の芝生も見えずさける菫を
昭憲皇太后
20.4.4 東京都清瀬市野塩 昭和薬科大学
此の園の菜の花を
此の園の春に胡蝶[こてふ]やあくがれむ
朝な夕なの花にほふ比[ころ]
村田春海「琴後集」
大根の花麥の中にまじれり
白妙の大根の花は雪にゝて(似て)
もゆる草葉と見ゆる麥畑[むぎはた]
小澤蘆庵「六帖詠草」
ダイコン 20.4.4 東京都清瀬市野塩昭和薬科大学薬草園
菜の花のさかりになるころ山吹もさきければ
山吹も菜もうき花の色ぞかし
さけば近づく春の別路[わかれぢ]
小澤蘆庵「六帖詠草」
オ散歩 ニ 来マシタ
【文例】 訳詩・近現代詩