墨場必携:漢詩 漢文
19.8.22 東京都清瀬市
竹葉庵十首 其七 釈元政
一枕短椽下
清風葉葉涼
恐人添曲節
莫遇蔡中郎
一枕[いちちん]短椽[たんてん]の下[もと]
清風葉葉[えふえふ]涼し
人の曲節を添ふるを恐る
蔡中郎に遇ふ莫かれ
※椽[てん]:たる木。棟から軒に掛け渡して屋根を支える木。椽下は位置として軒の下
※蔡中郎:後漢の蔡邕。伝説的な琴の名手。
※莫遇蔡中郎:もし蔡邕に知られたら、この竹は切られてよい笛にされてしまうだろう、との意。
軒の下に昼寝をすれば
風は葉を鳴らして涼しげ。
節回しをつける人がいてはと恐れる、
この涼しい音色を蔡中郎に知られてはたいへんだ。
21.8.26 東京都清瀬市
竹葉庵十首 其八 釈元政
吾廬無夏日
竹葉翠長寒
瓶水時移影
絶勝月下看
吾が廬[いほり]に夏日[かじつ]無きは、
竹葉[ちくえふ]翠[みどり]長[ちよう]じて寒し。
瓶水に時に影を移し、
絶[はなは]だ月下に看るに勝[まさ]れり。
私の廬に夏がないのは、
竹の葉が翠濃く繁って、冷ややかであるからだ。
瓶の水に映っている涼しい姿は、
月の光に照らされて看るのに勝っている。
【文例】 和歌へ