墨場必携:和歌 螢 夏虫
22.7.17 東京都清瀬市
この度は螢の歌の特集です。連載第13回にも螢を扱いました。そちらの例文も併せて御覧下さい。
桂のみこのほたるをとらへてといひ侍りければ、わらはのかざみの
そでにつつみて
つつめどもかくれぬものは夏虫の
身よりあまれる思ひなりけり
詠み人知らず『後撰和歌集』209
『大和物語』四〇段
ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは
秋風ふくと雁につげ(告げ)こせ
在原業平『後撰和歌集』252
『伊勢物語』四十五段
ものおもへば沢[さは]のほたるを
わが身よりあくがれにけるたま(魂)かとぞみる
和泉式部『後拾遺和歌集』1162
ものおもへば沢[さは]のほたるも
我が身よりあくがれ出づるたま(魂)かとぞみる
和泉式部『後拾遺和歌集』1162
※上の二首は同じ歌。伝本によって違いが出ている。
黄揚羽 22.7.18 東京都清瀬市
たちかへりあつめし窓にきてみれば
むかしわすれずとふほたるかな
『続拾遺和歌集』556
※第五句「とふほたるかな」は「飛ぶほたる」「訪ふほたる」いずれにも読める。
「飛ぶほたる」は定まった表現のように見えるが、第四句からのつながりを
見ると「訪ふほたる」もむしろ自然であって決めがたい。
なつくさの繁みの葉末[はすゑ]暮るるより
ひかりみだれてとぶほたるかな
『新後撰和歌集』239
風わたるあしのすゑ葉におくつゆの
たますらみえてとぶほたるかな
『新後撰和歌集』1285
かきくらすさつきのさよのあまくもに
かくれぬほしはほたるなりけり
『玉葉和歌集』399
いけみづのいひ出でがたき思ひとや
身をのみこがすほたるなるらむ
『新続古今和歌集』304
22.7.10 東京都清瀬市
夜をてらす草のほたるをあつめても
みぬよのことをたづね知るかな
源顕仲『堀河百首(長治二年[1105])』470
※読書を詠んだもの
ながれゆく川辺にすだくほたるをば
いさご(砂)にまじるたま(玉・魂)かとぞみる
隆源『堀河百首(長治二年[1105])』477
風そよぐあさじまじりのかるかやに
ほたるとびかふ夏のゆふぐれ
藤原為忠『堀河百首(長治二年[1105])』541
あまつほしかげみゆる夜はさはみづ(沢水)に
すだくほたるを分きぞかねつる
『久安百首(久安六年御百首[1150])』399
なつ草のくさの葉がくれゆくほたる
さはべの水に秋もとほからず
後鳥羽院『正治初度百首』33
尾長 22.7.18 東京都清瀬市
歌沢
蝉と螢を秤[はかり]にかけて
鳴いて別りよか焦れて退[の]きよか
ああ われこれをいかんせん
"オ散歩ニ 来マシタ 暑ソウニ 見エナイ?"
外猫さんは修行が出来てるからね