墨場必携:和歌
21.6.30 東京都清瀬市
五月待つ花橘の香をかげば
むかしの人の袖の香ぞする
『古今和歌集』139
夏山に鳴くほととぎす 心あらば
もの思ふ我に声[こゑ]な聞かせそ
『古今和歌集』145
思ひいづる ときはの山のほととぎす
唐紅[からくれなゐ]の振り出でてぞ鳴く
『古今和歌集』148
※時鳥は声が大きく、口の中が赤く見えることから、血を吐くほどに
声を振り絞って鳴くとされた。
五月雨に物思ひおれば ほととぎす
夜ふかく鳴きていづち行くらむ
『古今和歌集』153 紀友則
むかしへや今も恋しきほととぎす
ふるさとにしも鳴きて来つらむ
『古今和歌集』163 壬生忠岑
五月闇[さつきやみ]おぼつかなきに
ほととぎす鳴くなる声のいとどはるけさ
『和漢朗詠集』183 明日香皇子
21.6.1 東京都清瀬市
いにしへの野中の清水ぬるけれど
もとの心を知る人ぞ汲む
『古今和歌集』887
『古今和歌六帖』2921 むかし逢へる人
『後撰和歌集』
いそのかみふるの野道の草分けて
清水汲みにはまたも還らむ
『古今和歌六帖』2922
むかしをばかけじとおもへど
かくばかりあやしく目にもみつなみだかな
『栄華物語』藤原為頼
あるはなきなきはかずそふ世の中に
あはれ いつまであらんとすらん
『栄華物語』小大進
昔見し妹が墻根[かきね]は荒れにけり
つばなまじりの菫のみして 『堀河百首』
21.6.27 東京都清瀬市
【文例】 散文へ