2014年6月22日

墨場必携:漢詩 梅雨詩二題


       
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     「梅雨」           唐 杜甫

        南京犀浦道
        四月熟黄梅
        湛湛長江去
        冥冥細雨來
        茅茨疎易濕
        雲霧密難開
        竟日蛟龍喜
        盤渦與岸回
    
      南京(なんけい)犀浦(さいほ)の道
      四月 黄梅(こうばい)熟す
      湛湛(たんたん)として長江(ちやうかう)去り
      冥冥(めいめい)として細雨(さいう)来たる
      茅茨(ばうし)は疎にして湿(うるほ)ひ易く
      雲霧は密にして開け難し
      竟日(きやうじつ)蛟龍(かうりゆう)喜び
      盤渦(ばんくわ)岸と回(めぐ)る

       
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        南京犀浦:南京は成都。犀浦は県名。杜甫の草堂があった。
        四月:陰暦四月。現行暦の五月初旬からのひと月。
        竟日:一日中。終日。
        蛟龍:蛟と龍。
           蛟は龍の一種で「みづち」とされるもの。四つ足が
           あり、大水を起こすという。

       
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      南京(=成都)犀浦県にある草庵の道は、
      陰暦四月になって、梅の実は黄色に熟する。
      その頃に、長江は水を満々と湛えて流れ行き、
      あたりを暗くして、梅雨の細かな雨が降ってくる。
      草庵の茅葺きの屋根はまばらに葺いてあって、雨が滲みやすく、
      雲や霧は深くたれこめて、なかなか晴れることがない。
      この雨空、一日中を蛟龍は喜び、
      水面の渦は岸の形に沿って回っている。

       
0610紫陽花P6100003.jpg                                          26.6.10 東京都清瀬市



     「約客」           宋 趙師秀

        黄梅時節家家雨
        靑草池塘處處蛙
        有約不來過夜半
        閑敲碁子落燈花
      
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                                          26.6.21 東京都清瀬市

      黄梅(こうばい)の時節 家家の雨
      青草の池塘(ちたう) 処処の蛙(かはづ)
      約有れども来たらず 夜半(やはん)を過ぐ
      閑(しづ)かに碁子(きし)を敲(う)てば 灯花落つ

        碁子:碁石。
        燈花:燈芯の燃えきった所。

        
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      梅雨の時節はどの家も雨に降り籠められる。
      青草の繁る池の堤ではあちこちで蛙が鳴いている。
      来訪の約束があったのだが 来ないまま夜半が過ぎた。
      閑寂の中、碁石をパチンと置くと、燈芯が燃え落ちた。

        
0616紫陽花P6160079.jpg                                          26.6.16 東京都清瀬市




     

     

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