2011年5月12日

墨場必携:漢詩 初夏即事

    
8日IMG_2281.jpg                                         23.5.8 東京都清瀬市


   初夏即事   王安石

     石梁茅屋有彎碕
     流水濺濺度兩陂
     晴日暖風生麥氣
     綠陰幽草勝花時

       石梁(せきりやう)茅屋(ぼうおく)彎碕(わんき)有り
       流水濺濺(せんせん)として両陂(りやうひ)を度(わた)る
       晴日(せいじつ)暖風(だんぷう)麦気(ばくき)を生じ
       緑陰幽草(いうそう)花時(くわじ)に勝る

     石の梁 茅葺きの家 彎曲した川の岸
     流れる水はわらわらと両岸の間を通ってゆく
     晴れた日の光と暖かい風の中に麦の香は立ち
     緑の木陰人知れず繁る草むらは花咲く時節にも勝っている

    
IMG_2515.jpg                                         23.5.14 東京都清瀬市

   春日山荘、勒塘光行蒼(春日山荘、塘・光・行・蒼を勒す)  
                           公主宇智子

    寂寂雨荘山樹裏
    仙輿一降一池塘
    棲林孤鳥識春沢
    隠澗寒花見日光
    泉声近報初雷響
    山色高晴暮雨行
    従此更知恩顧渥
    生涯何以答穹蒼

     寂寂(せきせき)たる雨荘山樹(さんじゆ)の裏(うち)
     仙輿(せんよ)一たび降(くだ)る、一池塘(ちたう)
     林に棲む孤鳥は春沢(しゆんたく)を識り
     澗(たに)に隠るる寒花は日光を見る
     泉声近く報ず初雷(しよらい)の響
     山色高く晴る暮雨(ぼう)の行(こう)
     此(これ)従り更に知る恩顧の渥(あつ)きを
     生涯何を以つてか穹蒼(きゆうそう)に答へん

    ひっそりと静まりかえった森の山荘
    その池のほとりに今帝の輿が降臨された
    林に寂しく棲んでいる鳥は春の恵みをここに知り
    谷間に密やかに咲く花は暖かい日の光に浴した
    近くの滝の水音はさながら春雷の響きのように轟き
    夕暮れの雨が上がって山は晴れ晴れと高くそびえている
    この来駕によって君の御恩顧の篤いことを一層深く知った
    生涯のうち、どのようにしてこの大空のような御恩に報いることができよう。

    
IMG_2581.jpg                                         23.5.14 東京都清瀬市



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