墨場必携:漢詩 左右好風來
23.6.19 東京都東村山市北山公園
左右好風來
(左右より好き風来たる)「涼」を以て韻と為す 藤原道長
好風來處慰心腸
左右飄衣夏日忘
横劔腰間連竹響
續銘座下送荷香
簾帷高捲雙衿動
羅綺閑居兩鬢涼
唯樂前池無苦熱
好風(かうふう)来たる処 心腸(しんちやう)慰(なご)む
左右(さう)衣を飄(ひるがへ)し 夏日(かじつ)を忘る
剣を横たふる腰間(えうかん) 竹の響(ひびき)を連ね
銘を続くる座下(ざか) 荷(はちす)の香を送る
簾帷(れんゐ)高く捲くに 双衿(さうきん)動き
羅綺(らき)閑(しづ)かに居るに 両鬢(りやうびん)涼し
唯(ただ)に楽しぶ 前池(ぜんち)に苦熱(くねつ)無く
月明らかにして 白浪の氷霜(ひようさう)を畳むことを
竹響:竹の葉が風に吹かれて立てる葉擦れの音
荷香:「荷」は蓮の花
羅綺:薄物の綾絹
23.6.12 東京都清瀬市
心地よい風が吹いてきて 心は穏やかに慰められる
あちらからこちらから吹いて衣の袖をひるがえし 夏の暑さを忘れる
剣を横たえる腰のあたりには 竹の葉のそよぐ響きが絶え間なく
銘文を書き続ける座の足許には 蓮の花の香りが送られる
簾(すだれ)や帷(とばり)を高く捲き上げると
着物の衿もとが風に揺らぎ
薄絹の着物を着てしずかにいると 左右の鬢の毛が風に涼しい
ただひたすら楽しんでいる 前庭にある池には夏の酷暑もなく
澄んだ月光の下 池に立つ白波が氷や霜を重ねたように見えるさまを
23.6.12 東京都清瀬市
セグロセキレイ 23.6.25 東京都清瀬市