2011年6月27日

墨場必携:漢詩 左右好風來

          
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                                   23.6.19 東京都東村山市北山公園



   左右好風來  
   (左右より好き風来たる)「涼」を以て韻と為す   藤原道長

     好風來處慰心腸
     左右飄衣夏日忘
     横劔腰間連竹響
     續銘座下送荷香
     簾帷高捲雙衿動
     羅綺閑居兩鬢涼
     唯樂前池無苦熱

       好風(かうふう)来たる処 心腸(しんちやう)慰(なご)む
       左右(さう)衣を飄(ひるがへ)し 夏日(かじつ)を忘る
       剣を横たふる腰間(えうかん) 竹の響(ひびき)を連ね
       銘を続くる座下(ざか) 荷(はちす)の香を送る
       簾帷(れんゐ)高く捲くに 双衿(さうきん)動き
       羅綺(らき)閑(しづ)かに居るに 両鬢(りやうびん)涼し
       唯(ただ)に楽しぶ 前池(ぜんち)に苦熱(くねつ)無く
       月明らかにして 白浪の氷霜(ひようさう)を畳むことを

     竹響:竹の葉が風に吹かれて立てる葉擦れの音
     荷香:「荷」は蓮の花
     羅綺:薄物の綾絹

 
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                                          23.6.12 東京都清瀬市



     心地よい風が吹いてきて 心は穏やかに慰められる
     あちらからこちらから吹いて衣の袖をひるがえし 夏の暑さを忘れる
     剣を横たえる腰のあたりには 竹の葉のそよぐ響きが絶え間なく
     銘文を書き続ける座の足許には 蓮の花の香りが送られる
     簾(すだれ)や帷(とばり)を高く捲き上げると
                      着物の衿もとが風に揺らぎ
     薄絹の着物を着てしずかにいると 左右の鬢の毛が風に涼しい
     ただひたすら楽しんでいる 前庭にある池には夏の酷暑もなく
     澄んだ月光の下 池に立つ白波が氷や霜を重ねたように見えるさまを

    
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                                          23.6.12 東京都清瀬市

    
0625背黒セキレイ6634.jpg                                   セグロセキレイ 23.6.25 東京都清瀬市

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