2011年10月 7日

墨場必携:漢詩 詠月


    
1110tsuki 6837.jpg                                            22.11.10 東京都清瀬市

   詠月(月を詠ず)     文武天皇

     月舟移霧渚
     楓楫泛霞濱
     臺上澄流耀
     酒中沈去輪
     水下斜陰碎
     樹落秋光新
     獨以星間鏡
     還浮雲漢津

       月舟(げつしう)霧渚(むしよ)に移り
       楓楫(ふうしふ)霞浜(かひん)に泛(うか)ぶ
       臺上(だいじやう)流耀(りうえう)澄み
       酒中 去輪(きよりん)沈む
       水下(くだ)り 斜陰(しやいん)砕け
       樹(き)落ち 秋光(しゆうくわう)新たなり
       独(ひと)り星間(せいかん)の鏡を以て
       還(ま)た雲漢(うんかん)の津(しん)に浮かぶ

       月舟:月を舟に見立てた表現。
       楓楫:楓の楫をつけた舟。楓は香木。
       霧渚:霧にかすんだ渚。
       霞浜:かすんだ浜。
         「霞」は春の景物。ここでは靄(もや)にかすむ大気のさま。
       斜陰:月光に照らされて水に斜めに映る舟の影。
          ここでは大空を水面に見立ててそのように表現する。
       星間鏡:月のこと。星々の間の鏡に喩えた。
       雲漢:天の川。銀河。

    
1002巾着田0376.jpg                                       23.10.2 埼玉県日高市巾着田

       月の舟は 霧のたちこめる渚を移りゆき
       楓の楫(かじ)持つその舟は もやにかすむ浜に浮かんでいる
       臺(うてな)の上には流れる月の耀(ひかり)が澄みわたり
       酒杯の中には移り去る月輪が沈んでいる
       天上 川水が流れるにつれ 斜めの陰は砕け
       木々は葉を落として 秋の光は新鮮である
       月はひとり星々の間の鏡となって
       天の川の渡し場に浮かんでいる
       
    
1002彼岸花7823.jpg                                           23.10.2 東京都清瀬市

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