墨場必携:漢詩 春遊
24.3.21 東京都清瀬市
「春遊(しゆんいう)」 江馬細香
相約春郊歩釅晴
東風一路繍鞋軽
綿蛮百囀知何處
翠柳烟深不認鶯
枝垂れ梅 24.3.21 東京都清瀬市
相(あひ)約して 春郊(しゆんかう) 釅晴(げんせい)に歩む
東風一路 繍鞋(しうあい)軽(かろ)し
綿蛮(めんばん)百囀(ひやくてん) 知んぬ 何(いづ)れの処なるか
翠柳(すゐりう)烟(けむり)深くして 鶯を認めず
釅晴:「釅」は濃度が濃い意。「釅晴」は快晴。
繍鞋:刺繍の履物。もとは中国の縫い取りのある履のことで、漢詩にあり、
ここは婦人の履き物、草履や下駄の意に用いている。
綿蛮:鶯の鳴き声を言う。『詩経・小雅』にある。
知何處:「何處」どこ、すなわち不明の場所を「知った」とする構文。
拠って、その場所を知らない、どこかわからない、の意。
烟:「煙」に同じ。大気に漂う靄(もや)のこと。春の場合は霞と同じ。
百舌鳥 24.3.21 東京都清瀬市
約束しあって春の野を よく晴れた陽光のもと歩む
春風の吹きすぎる一筋の道 私の足取りも軽い
鶯のさかんに囀(さえず)る声が聴こえるのは 一体どこに
翠に芽吹く柳に春の霞は深く 鶯の姿は見えない
枝垂れ梅 24.2.12 東京都清瀬市