墨場必携:漢詩 落葉賦
23.11.12 東京都清瀬市
「落葉賦(らくえふのふ)」(紀齋名)より抜粋
『本朝文粋』巻第一、 賦、樹木
則知華以春栄。葉以秋落。
感春秋之逓換。知盛衰之所託。
不常其節。験先衰於靑楸。
何守其貞。嗤後凋於翠栢。
則(すなは)ち知りぬ、華(はな)は春を以(もち)て栄え、
葉は秋を以(もち)て落つ。
春秋(しゆんじう)の逓換(ていくわん)に感じて、
盛衰(せいすゐ)の託する所を知りぬ。
其の節を常にせず、
先づ衰ふることを青楸(せいしう)に験(こころ)みる。
何ぞ其の貞を守らむ、
後に凋(しぼ)むことを翠栢(すゐはく)に嗤(わら)ふ。
※春秋之逓換:春と秋とが交互に入れ替わること。繰り返す四時の移り変わり。
※盛衰之所託:盛と衰のよる所。盛衰の理(ことわり)。
※青楸:青いヒサギ。落葉樹。
※凋:しぼむ
※翠栢:栢は柏に同じ。常緑樹。常緑樹の総称にも用いる。翠栢は緑の柏。
23.10.9 東京都清瀬市
当然のことに、花は春に咲き、葉は秋に落ちることを知る。
春と秋とが互いに入れ替わることに感じて、盛と衰とのよる所を知る。
自然界に、一年中その節操を尽くして変わらないものはない。
それは、青い楸(ヒサギ)の葉が先ず衰え落ちることによって知られる。
どうして一年中その不変の姿を変えずにいられようか。
緑の柏が他の木々におくれて枯れしぼむことを嗤う。
23.10.9 東京都清瀬市