2011年4月21日

墨場必携:漢詩 惜櫻花 島田忠臣


    422鬱金.jpg                        鬱金 23.4.22 東京都清瀬市

   「花前有感[花前(くわぜん)感(おも)ひ有り]」
                   島田忠臣
  
    去年落花今歳發
    我爲去歳惜花人
    年年花發年年惜
    花是如新人不新

      去年(こぞ)の落花 今歳(ことし)発(ひら)く
      我は去歳の花を惜しむ人たり
      年年花発(ひら)き 年年惜しむ
      花は是れ新(あら)たしきが如きも 人は新たしからず

    
15ヒメリンゴ4151.jpg                            23.4.15 東京都清瀬市  

  去年散った花が 今年もまた開いた
  私は去年の花を愛惜する者である
  年ごとに花は咲き 年ごとに人は花を惜しむ
  花はいつも新しいもののようだが 花見る人は年ごとに新しくはないのだ
  
  
    15ヒメリンゴ415.jpg                            23.4.15 東京都清瀬市
  

   「惜櫻花(桜花を惜しむ)」
                   島田忠臣
  
    宿昔猶枯木
    迎晨一半紅
    國香知有異
    凡樹見無同
    折欲妨人鏁
    含應禁鳥籠
    此花嫌早落
    爭奈賂春風

      宿昔(しゆくせき)猶(なほ)し枯木(こぼく)のごとく
      晨(あした)を迎へて一半(いつぱん)紅(くれなゐ)なり
      国香(こくかう)異(け)しきこと有るを知り
      凡樹(ぼんじゆ)同(ひと)しきこと無きを見る
      折(を)るに人を妨げて鏁(くさり)せんとし
      含むに鳥を禁(いさ)めて籠(こ)むべし
      此の花の早く落つることを嫌ふ
      爭奈(いかに)せん春風に賂(まひな)ふことを

    15八重桜415.jpg                            23.4.15 埼玉県所沢市  

  昨夜はまだ枯れ木のようだったが
  夜明けを迎えて半ばが開く 美しい紅色の桜の花
  我が国の誇りとする桜の香は 他の花の香とは較べものにならない
  ほかの木々に 桜ほどのものがないこともわかっている
  誰かが折ろうとするなら 鎖に繋いでそれを妨げようと思い
  鳥が啄もうとするなら 鳥を禁足して籠に閉じこめよう
  この花が早く散ってしまうのはいやだ
  花を散らさぬよう 春風には賂(まいない)を贈ろうと思うのだが
                  さて どのようにしたらよいのだろう
 (何としても花を散らせたくないのだが)
  
  
    
22八重桜4221.jpg
                           23.4.22 埼玉県所沢市


   「初春於作宝楼置酒」
              長屋王
     景麗金谷室
     年開積草春
     松烟双吐翠
     桜柳分含新
     嶺高闇雲路
     魚驚乱藻浜
     激泉移舞袖
     流声韵松筠

    15八重桜4151.jpg                            23.4.15 埼玉県所沢市
 

       景は麗(きよら)なり金谷(きんこく)の室
       年は開く積草の春を
       松と烟(かすみ)と双(ふた)つながら翠(みどり)を吐き
       桜と柳と分きて新(わか)きを含(ふふ)めり
       嶺は高くして雲の路に闇(くら)く
       魚は驚きて藻の浜(ほとり)に乱(ち)らふ
       激泉に舞(まひ)の袖を移(映)しゆけば
       流声は松と筠(たけ)とに韵(ひび)けり
  
    八重桜文例4.jpg
                           23.4.14 東京都清瀬市


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