墨場必携:漢詩 猫詩二題
26.4.11 世田谷区豪徳寺
花下睡猫(くわかのすいべう) 釋梅癡(1793〜?)
不追𨿸犬去昇天
留住人閒作嬾仙
恰似五勞猶病酒
藥欄風暖背花眠
26.4.12 東京都清瀬市
鶏犬を追ひ去りて天に昇らず
留まりて人間(じんかん)に住して嬾仙(らんせん)と作(な)る
恰(あたか)も五労(ごらう)に似 猶(な)ほ病酒のごとく
薬欄(やくらん)風暖かく 花に背きて眠る。
※淮南王劉案が仙人になって昇天した時、残った仙薬を鶏と犬
は舐めてともに昇天した。その時猫は同行せずに、地上に残っ
たという伝説がある。
※嬾仙(らんせん):怠け者の仙(せん:仙人)
※五労(ごらう):人を損なうという五つの労、害悪、つかれ。
※薬欄(やくらん):芍薬を植えてある囲い。
鶏や犬のあとについて天に昇ったりせず、
この世に留まって怠け仙人になった。
人の身を害する五つの労(つかれ)に似てまた泥酔のようでもある
芍薬の囲いに吹く風は暖かく、花に背を向けてひたすら眠っている
悼猫児(猫児を悼む) 策彦周良(1501〜1579)
猫児不幸俄横死
鼠輩作群有喜声
好転全身上天去
堪飢四子可憐生
26.4.13 東京都清瀬市
猫児(べうじ)不幸にして俄(にはか)に横死す。
鼠輩群を作(な)して喜声有り。
好し轉(うた)た身を全うして天に上り去るも、
飢うるに堪ふる四子は可憐生(かれんせい)。
※猫児は猫の愛称、子猫のことではない。
※(かれんせい)=不憫なやつ
26.4.13 東京都清瀬市
猫が不幸にしてにわかに死んでしまった。
鼠のやつは群をなして走り回っている。
急死した猫の体は上天に召されたにしても、
残されて飢えに堪えている四匹の子猫を見るのは不憫に耐えない)
26.4.13 東京都清瀬市