2012年4月22日

墨場必携:漢詩 惜残春 大江朝綱


      
0415花桃3594.jpg                                       花桃 24.4.4 東京都清瀬市

  「惜残春」    大江朝綱(おほえのあさつな) 

     艶陽盡處幾相思
     招客迎僧欲展眉
     春入林歸猶晦迹
     老尋人到詎成期
     落花狼藉風狂後
     啼鳥龍鐘雨打時
     樹欲枝空鶯也老
     此情須附一篇詩

      艶陽(えんやう)尽くる処 幾(いく)たびか相ひ思ふ
      客を招き僧を迎へて 眉を展(のべ)んと欲す 
      春は林に入り帰りて 猶(な)ほ迹(あと)を晦(くらま)すがごとく
      老は人を尋ね到るも 詎(なん)ぞ期を成さん
      落花(らつくわ)狼藉(らうぜき)たり 風の狂したる後
      啼鳥(ていてう)龍鐘(りようしよう)たり 雨の打つ時
      樹は枝空(むな)しからんと欲し 鶯も也(ま)た老ゆ
      此の情須(すべか)らく一篇の詩に附すべし

      
0415八重桜3927.jpg                                      八重桜 24.4.4 東京都清瀬市

   展眉:眉をのばす。心配事がなくなる意。のびのびする。
   晦迹:姿をくらます。「迹」は「蹟」が本字。
   狼藉:狼が草を押し倒し敷いて寝た寝床の跡という。
      そこから、取り散らしてあるさま。
   龍鐘:雨や涙が滴るさま。疲弊して弱るさまにも。

      
0410ツグミ2934.jpg                                      ツグミ 24.4.10 東京都清瀬市

    春も終わろうとするこのごろ 幾たびも思う
    客を招き 僧を迎えて 胸の思いを晴らそうとするのである
    春は林の中に身をひそめゆき
              どこへともなく姿をくらまし帰ってしまったよう
    老いは人を尋ね求めてやって来るが
               どうしてそのようなものと会う約束などしよう
    春の嵐が吹き荒れたあと 落花は地上に乱れ散り
    晩春の雨が降りそそぐ時 鶯は飛び悩んで啼く
    桜の樹は早く枝を空(から)にしようと盛んに花を散らせ
              その空しくなった枝にまだ啼いている鶯もいる    
    この晩春の風情を一篇の詩に詠まないわけにはゆかないだろう


      
0418ひめりんご4938.jpg                                    ヒメリンゴ 24.4.18 東京都清瀬市


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