墨場必携:漢詩 九月十三夜
陰暦九月十三夜 19.10.23 東京都清瀬市
陰暦九月十三日は現行暦ではおよそ十月の中旬にあたる。
陰暦九月十三日の月(十三夜)は別名「後(のち)の月」。仲秋名月の次
に観賞される月である。古くから詩歌の題材であった。
宮中の年中行事になっている観月宴は陰暦八月十五夜と、この九月十三夜
の二回がある。
九月十三夜 上杉謙信
霜満軍営秋気清
数行過雁月三更
越山併得能州景
遮莫家郷憶遠征
霜は軍営に満ちて秋気清し、
数行(すうかう)の過雁(くわがん)月三更[さんかう)。
越山併(あは)せ得たり能州の景(けい)、
遮莫(さもあらばあれ)家郷(かきやう)遠征を憶(おも)ふ。
23.10.11 東京都清瀬市
霜は軍営に満ち満ちて秋の気配は清(す)みわたり、
渡る雁の群は幾行(いくつら)か夜も更けわたる。
越の山々と能登の地とを併せ得て見たるこの景色よ、
郷里の家族は出征した身を案じているであろうが、
そんなことは気にすまいぞ
(北川蓬翁訳)
23.10.9 東京都清瀬市