2011年2月10日

墨場必携:漢詩「奉和河陽十詠」

      
4鴨3.jpg                                     23.2.4 東京都清瀬市金山調節池

 「奉和河陽十詠」河陽花   藤冬嗣『文華秀麗集』

       河陽風土饒春色
       一懸千家無不花
       吹入江中如濯錦
       亂飛機上奪文紗


  「「河陽十詠」に和し奉(たてまつ)る」 河陽花 

   河陽(かやう)の風土 春色(しゆんしよく)饒(ゆた)かに
   一県千家 花ならざるは無し
   江中(かうちゆう)に吹き入つては錦を濯(あら)ふが如く
   機上に乱れ飛んでは文紗(ぶんさ)を奪ふ

     濯錦:錦は蜀の名産品。錦江(きんこう)の流れに晒すと
        一層色が鮮やかになるとされる故事から詠む。
     機上奪文紗:梁簡文帝「梅花の賦」
       「楼上の落粉を争ひ 機中の織素を奪ふ」に拠るか。  

      
10.紅梅.jpg                                      紅梅 23.2.10 東京都清瀬市
     
     河陽は土地柄、春の景色が豊かであって、
     この町のいたるところ、どの家にも花が咲き満ちている。
     花びらが川に吹き入れば、流れる水は錦を晒すよう、
     機(はた)の上に乱れ飛んでは、絹の文様の美しさを奪うばかりだ。

5梅白b紅白.jpg                                          23.2.5 東京都清瀬市

 「奉和河陽十詠」江上舟   仲雄王『文華秀麗集』

       晴初駐蹕馳玄覧
       一點孤浮江上舟
       爲虚物情不相怨
       乗吹遙度浪中天


  「「河陽十詠」に和し奉(たてまつ)る」 江上舟 

   晴初(せいしよ) 蹕(ひつ)を駐めて玄覧(げんらん)を駐せ
   一點(いつてん) 孤(ひと)り浮かぶ江上(かうじやう)の舟
   虚為(た)る物情(ぶつじよう) 相ひ怨(うら)みず
   吹(すい)に乗じて遙かに度(わた)る 浪中(らうちう)の天

   空が晴れて、我が君が車を止め目を馳せたまうと、
   ぽつんと一つ、川の中に舟が浮かんでいる。
   虚心に漂う舟はほかに逆らう気持ちもなく、
   風に乗って浪の中を天まで上ってゆく。


    
6水辺.jpg                                          23.2.6 東京都清瀬市

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