墨場必携:漢詩 留別
エナガ 23.3.19 東京都清瀬市
留別靑龍寺義操阿闍梨[青龍寺の義操阿闍梨に留別(りうべつ)す]
空海「経国集」巻十梵門
同法同門喜偶深
遊空白霧忽歸岑
一生一別難再見
非夢思中數數尋
同法同門(どうはふどうもん) 偶(あ)ふを喜ぶこと深し
空に遊ぶ白霧(はくむ) 忽(たちまち)ち岑(みね)に帰る
一生 一たび別るれば 再(ふたた)びは見(あ)ひ難し
夢に非(あら)ず 思中(しちゆう)に数々(しばしば)尋ねん
エナガ 23.3.19 東京都清瀬市
※留別:旅立つ人が見送る人に別れの気持ちを込めて詩を贈ること。
※青龍寺:長安城東南、新昌坊にあった寺。隋代に霊感寺として創建され、
8世紀になって青龍寺と改まった。
空海はここで修行し、恵果阿闍梨から密教の秘法を授かった。
※義操阿闍梨:詳細不明。
小島憲之氏は、王維作「夏日 青龍寺に過ぎり、
操禅師に謁す」詩の題にある操禅師のことと推定。
王維の詩は空海入唐の半世紀以上前に作られている
(天宝末年742〜746の間)。
空海が生きている操禅師を知っていた可能性は低いか。
23.3.19 東京都清瀬市
同じ仏門の友としてあなたにお会いできたことを
本当に嬉しく思います。
空に漂う白い霧がにわかに山に帰ってゆくように
私は故国に帰ります。
この一生、ひとたびお別れすれば、
もう二度とはお目にかかることはできないでしょう。
こののちは、夢の中ではなく、心の中で、
しばしばあなたをお尋ねするでしょう。
花桃 23.3.24 東京都清瀬市