2012年11月23日

墨場必携:漢詩 晩秋舟行

       
1118楓9862.jpg                                          24.11.18 東京都清瀬市


   晩秋舟行(ばんしう  しうかう)
                     市河寬齋

    晴江秋淨碧涵天
    夾岸霜楓燒晩煙
    漁唱商歌都去盡
    思詩人在夕陽船

   晴江(せいかう)秋浄(きよ)く碧(へき)天を涵(ひた)す、
   夾岸(けふがん)の霜楓(さうふう)晩煙(ばんえん)を焼く。
   漁唱(ぎよしやう)商歌(しやうか)都(すべ)て去り尽くし、
   詩を思ひて人は夕陽(せきよう)の船に在り。
   
       
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  晴れ渡った川は秋の気配も清く、碧(あお)い水は天をも涵(ひた)すよう、
  両岸の紅葉は夕暮れの煙(もや)に燃え立つようだ。
  漁師や商人の歌声もみな消えつくし、
  詩を作ろうとする人だけが夕陽を受ける船に残っている。
   
       
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  碧(へき):舟の行く川の水の色。
  霜楓(さうふう):古代は時雨や霜によって秋の紅葉は進むと考えられていた。
        詩の表現はそれを踏襲するので、霜葉、霜楓は紅葉を表す。
        霜で傷んだ楓のことではない。
  漁唱商歌都去盡:舟行の合間に聞こえていた歌。
          舟は目的地に着いて、歌ももう聞こえない。
  思詩人在夕陽船:人はみな下舟したが、詩人だけがまだ舟に残って
          詩作に夢中になっている。
          もちろん作者自身のこと。
          
       
1110ススキ9325.jpg                                          24.11.18 東京都清瀬市





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