墨場必携:漢詩「春日作」
23.2.12 東京都清瀬市
春日作(しゆんじつのさく)」 嵯峨天皇『経国集』
閏是新正後
陽春二月時
庭蘭萌稚葉
窓柳軽糸乱
花色風初暖
鶯声日漸遅
春来傷節候
幽興復煕煕
閏(うるふ)は是れ新正(しんせい)の後(のち)
陽春(やうしゆん) 二月(にぐわつ)の時
庭蘭(ていらん) 稚葉(ちえふ)を萌(きざ)し
窓柳(そうりう) 軽糸(けいし)を乱す
花色(くわしよく) 風初めて暖かに
鶯声(あうせい) 日に漸(やうや)く遅し
春来たつて 節候(せつこう)を傷み
幽興(いうきよう) 復(ま)た煕煕(きき)たり
閏:陰暦時代、日数調整のために、同じ月を二回設ける年があった。
その二回目の月。たとえば、十月の次に閏十月があった。
新正:新年の正月
節候:季節の移り変わり。
幽興:奥深くもの静かな趣。
煕煕:やわらぎ楽しむさま。
23.2.24 東京都清瀬市柳瀬川
閏月は新年にやって来た。
従って、いつもの年でいえば今は二月のうららかな時節。
庭の蘭(藤袴)は若葉をきざし、
窓辺の柳は細くしなやかな枝を春風に揺らしている。
花の色はようやく暖かな風をうけて、
鶯の声も日ましにのどかになってくる。
春が深まるにつれて、時節の過ぎ行くことに心も傷むが、
今は奥深い自然の風興に心をなごませることにしよう。
23.2.19 東京都清瀬市