墨場必携:漢詩 題大庾嶺画 菅原文時
25.2.3 東京都清瀬市
(「題大庾嶺画(たいゆうれいのがにだいす)」※) 菅三品(菅原文時)
五嶺蒼蒼雲往來
但憐大庾萬株梅
誰言春色従東到
露暖南枝花始開
『和漢朗詠集』91・92「春」梅
※『江談抄』に拠れば、本詩は「内裏坤元録屏風」(村上天皇天暦年間)に
詠まれた作。中国の名所を集め、それぞれに因んだ詩を添えた屏風。
五嶺(ごれい)蒼々(さうさう)として 雲往来す
但(ただ)憐れむ 大庾(たいゆう)万株(まんしゆ)の梅
誰(たれ)か言ふ 春の色の東(ひむがし)より到ると
露暖かにして 南枝(なんし)に花始めて開く
25.2.8 東京都清瀬市
五嶺は蒼蒼(あおあお)として 頂きを雲が来ては去ってゆくばかり
ただ大庾の嶺だけは 万株にも及ぶ梅の花がすばらしい
誰が言ったのだろう 春の気配は東から訪れると
陽光に露も暖められて 南の枝から花は咲き始めた
25.2.8 東京都清瀬市
五嶺(ごれい):大陸中国の南部を東西に伸びる南嶺山脈を、別名五嶺山脈、
また五嶺という。西から東に、順に越城嶺(えつじょうれい)、都龐嶺
(とほうれい)、萌渚嶺(ほうしょれい)、騎田嶺(きでんれい)、大庾嶺
(だいゆれい:本詩「たいゆう」の地)の五つの嶺からなる。
大庾萬株梅:大庾(たいゆう)は五嶺山脈の東の端の嶺。
唐の宰相張九齢(678〜740)が大庾嶺を切り開いて梅を植え
(「梅関古道」)たことから、後は梅嶺とも呼ばれる。
梅の名所として白居易などが詩歌に詠み、我が国の詩もこれを引く。
ジョウビタキ 25.2.2 東京都清瀬市