墨場必携:漢詩 梅花 夕暮れ
鶯 23.2.10 東京都清瀬市
「梅花」 江馬天江
竹外暗聞香
溪南天欲夕
横枝不見花
凍月一痕白
竹外(ちくぐわい) 暗(あん)に香(かう)を聞き
溪南(けいなん) 天(てん)夕(く)れんと欲す
横枝(わうし) 花を見ず
凍月(とうげつ) 一痕(いつこん)白し
竹外:「竹」は竹叢(むら)。「竹外」はその竹むらの周辺一帯。
暗に香を聞く:熟語「暗香」はどこからともなく漂ってくるよい香り。
「聞く」は関知する意味で聴覚に限らず嗅覚にも用いる。
ここではもちろん「(梅の)よい香りを感じた」ことを言う。
凍月:寒い時期のひややかな月。
一痕白しとあるのは、痕のように鋭く細い月。
夕暮れに細い月が出ているのは陰暦の月齢では月始め。
和文でいう「夕月夜(ゆふづくよ)」の時期。
翡翠 24.2.4 東京都清瀬市
竹叢(むら)の外に どこからともなく香りが漂い、
渓(たに)の南の空は暮れかかる。
横にさし延びた枝に 花はなく、
凍るような細い月が 空に一すじ白い。
※題は「梅花」。詩の言葉にそれそのものを説明する辞句を用いずに、たしかな
存在だけを詠んだ詩。詩が主役として扱うのは、姿を見せなくともそれと知ら
しめる梅の芳香である。
23.2.7 東京都清瀬市