2012年2月10日

墨場必携:漢詩 梅花 夕暮れ

    
230210ウグイス9443.jpg                                         鶯 23.2.10 東京都清瀬市

   「梅花」    江馬天江

       竹外暗聞香
       溪南天欲夕
       横枝不見花
       凍月一痕白

     竹外(ちくぐわい)  暗(あん)に香(かう)を聞き
     溪南(けいなん)  天(てん)夕(く)れんと欲す
     横枝(わうし)  花を見ず
     凍月(とうげつ)  一痕(いつこん)白し

      竹外:「竹」は竹叢(むら)。「竹外」はその竹むらの周辺一帯。
      暗に香を聞く:熟語「暗香」はどこからともなく漂ってくるよい香り。
         「聞く」は関知する意味で聴覚に限らず嗅覚にも用いる。
          ここではもちろん「(梅の)よい香りを感じた」ことを言う。
      凍月:寒い時期のひややかな月。
         一痕白しとあるのは、痕のように鋭く細い月。
         夕暮れに細い月が出ているのは陰暦の月齢では月始め。
         和文でいう「夕月夜(ゆふづくよ)」の時期。

    
0204翡翠1627.jpg                                         翡翠 24.2.4 東京都清瀬市

    竹叢(むら)の外に どこからともなく香りが漂い、
    渓(たに)の南の空は暮れかかる。
    横にさし延びた枝に 花はなく、
    凍るような細い月が 空に一すじ白い。


   ※題は「梅花」。詩の言葉にそれそのものを説明する辞句を用いずに、たしかな
    存在だけを詠んだ詩。詩が主役として扱うのは、姿を見せなくともそれと知ら
    しめる梅の芳香である。


    
230207三日月9090.jpg                                            23.2.7 東京都清瀬市


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