墨場必携:漢詩 新蝉 菅原道真
25.7.27 東京都清瀬市
今年異例腸先断
不是蝉悲客意悲
『和漢朗詠集』195
「新蝉」菅原道真『菅家文草』
25.7.15 東京都清瀬市
今年(こんねん)は例(つね)よりも異(こと)にして
腸(はらはた)先(ま)づ断(た)ゆ
これ蝉(せみ)の悲しぶのみにあらず
客(かく)の意(こゝろ)も悲しぶなり
腸先断:副詞「先ず」を挟んで「断腸」。
「断腸」は腸(はらわた)が千切れるほどの苦しみ。
もとは子を失った母猿がその悲しみで死に、その体を見ると
内蔵が千切れていたという故事に拠る。激しい悲しみの比喩に
腸を断つほどであると使う。
客:作者自身
25.7.15 東京都清瀬市
今年の蝉の声はいつものよりも悲しく聞こえる。
蝉の声が特に悲しいのではなく、
それを聞く私の心が悲しんでいるからなのだろう。
作者道真が都を離れて讃岐守として辺鄙な讃岐に赴任した年の夏、
陰暦五月の新蝉を聞いたときの作。
25.7.26 東京都清瀬市