墨場必携:漢詩 首夏 四月 李賀
24.5.5 東京都清瀬市
『河南府詩十二月楽辞、幷閏月』より「四月」 李賀
暁涼暮涼樹如蓋
千山濃緑生雲外
依微香雨靑氛氳
膩葉蟠花照曲門
金塘閑水搖碧漪
老景沈重無驚飛
墮紅殘萼暗参差
※一首が奇数句で構成されている珍しい作。詩形としては七言古詩。
陰暦四月は現行暦の五月初旬からの一ヶ月。
陰暦の夏三箇月の第一月。初夏、孟夏。また、夏の始まりを首夏。
24.4.28 東京都清瀬市
暁に涼しく暮に涼しく 樹は蓋(がい)の如し
千山(せんざん)の濃緑(のうりよく) 雲外(うんがい)に生ず
依微(いび)たる香雨(かうう) 青(せい)氛氳(ふんうん)たり
膩葉(じえふ)蟠花(ばんくわ) 曲門(きよくもん)を照らす
金塘(きんとう)の閑水(かんすい) 碧漪(へきい)揺れ
老景(らうけい)沈重(ちんじゆう)にして 驚飛(きようひ)する無く
堕紅(だこう)残萼(ざんがく) 暗(あん)に参差(しんし)たり
依微:ぼんやりしたさま。
氛氳:気の盛んなさま。
膩葉:「膩」はあぶら。脂肪。また肥え太る。
膩葉はつややかに厚い葉。
金塘:「金」は美しいことを言う冠詞。「塘」は堤、池。
碧漪:「漪」はさざ波。波紋
参差:互いに入り交じるさま。
ユキヤナギ 24.5.4 東京都清瀬市
夜明けは涼しく、暮れもまた涼しく、樹木は繁り覆って天蓋のようだ。
四方の山々は緑を深くして、雲の彼方にそびえている。
細かな香しい雨が来ると、辺りには盛んな緑の気配が立ちこめる。
厚い緑の葉、びっしりと集まり咲く花の色は曲門に照り映える。
美しい堤の閑(しず)かな水面に、碧の波紋が揺れ、
樹木の成熟したたたずまいは重々しく、騒がしく散る花びらも無く、
散り堕(お)ちた真紅の花と萼とが鬱蒼と暗い木の下に入り交じっている。
24.5.5 東京都清瀬市