2009年6月 1日

墨場必携:散文 あふち

3kiri.jpg                                          桐の花 21.5.3 東京都清瀬市

  桐

   木の花は 桐の木の花、むらさきに咲きたるはなほをかしきにを
  葉のひろごりざまぞ、うたてこちたけれど、こと木どもとひとしう
  いふべきにもあらず。もろこしにことごとしき名つきたる鳥の、
  えりてこれにのみゐるらん、いみじう心ことなり。まいて琴に作り
  て、さまざまなる音のいでくるなどは、をかしなど世のつねにいふ
  べくやはある、いみじうこそめでたけれ。

  ※紫に咲く花はひとり清少納言だけではなく平安貴族好み。
   もろこしにことごとしき名つきたる鳥:鳳凰のこと。
   桐の木を好んでそこに止まるという。
   桐の木は琴の材となることを挙げ、並みのすばらしさではないと
   讃えている。
                 『枕草子』37段「木の花は」(清少納言)


  楝(あふち:栴檀)

   木のさまにくげなれど、楝(あふち)の花いとをかし。かれがれに
  さまことに咲きて、かならず五月五日にあふもをかし。

  ※楝の花は細かく細い五弁花で、見た目にみずみずしくはない。
   「かれがれ」はそれを言うものか、不詳。
   陰暦五月五日は現行暦の六月上旬になる。毎年必ず五月五日端午の
   節句に咲き遇うのがおもしろいとしている。「あふち」の「あふ」
   と掛けた表現であろう。
                 『枕草子』37段「木の花は」(清少納言)

1sannpogre.jpg          オ散歩ニ 来マシタ

【文例】 訳詩・近現代詩

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