墨場必携:漢文「冷泉院池亭花光浮水上」詩序
24.4.7 東京都清瀬市
「冷泉院池亭花光浮水上」詩序 菅三品(菅原文時)
瑩日瑩風 高低千顆万顆之玉
染枝染浪 表裏一入再入之紅
誰謂水無心 濃艶臨兮波変色
誰謂花不語 軽漾激兮影動脣
ソメイヨシノ 24.4.4 東京都清瀬市
日に瑩(みが)き 風に瑩(みが)く
高低(かうてい)千顆万顆(せんくわばんくわ)の玉
枝を染め 浪を染む
表裏(へうり)一入再入(いちじふさいじふ)の紅(こう)
誰(たれ)か謂(い)ひし 水 心無しと
濃艶(ぢようえん)臨(のぞ)んで 波 色を変ず
誰(たれ)か謂(い)ひし 花 語(ものい)はずと
軽漾(けいやう)激して影脣を動かす
瑩日瑩風:花を玉にたとえた形容。
一入再入:染色の用語。染料に一度入れ、また入れて、濃さを増す。
一入は和語としては「ひとしほ」。
軽漾:軽らかな波
24.4.7 東京都清瀬市
日の光にみがかれ、風にみがかれて、
高い梢に、低い水面に 輝く千粒万粒の玉のような美しさ。
枝を染め、枝を映す池の波を染めて、
あたかも裏と表とを薄く濃く染め分けた紅の衣のようだ。
誰が言ったか、水には心がないと。
色濃く魅力的な花が水面をのぞき込むと水は色を変える。
誰が言ったか、花はものいわぬと。
水面に小波(さざなみ)が立てば花影はゆらぎ、
花は脣を動かすのである。
24.4.27 東京都清瀬市