2008年11月16日

アテネ文庫

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アテネ文庫をご存知でしょうか?

これは昭和22年に発行された「わが父 西田幾太郎(西田静子・上田弥生共著)」という本です。最後に書かれている「アテネ文庫刊行のことば」に、妙に感動してしまいました。

 

 

 

弘文堂という出版社から発行されたものです。

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アテネ文庫 刊行のことば

昔、アテネは方一里にみたない小国であった。しかもその中にプラトン、アリストテレスの哲学を生み、フィディアス、プラクシテレスの芸術を、またソフォクレス、ユウりピデスの悲劇を生んで、人類文化永遠の礎石を置いた。

明日の日本もまた、たとい小さく且つ貧しくとも、高き芸術と深き学問とをもって世界に誇る国たらしめねばならぬ。「暮しは低く思いは高く」のワーズワースの詩句のごとく、最低の生活の中にも最高の精神が宿されていなければならぬ。

本文庫もまたかかる日本に相応しく、最も簡素なる小冊の中に最も豊かなる生命を充溢せしめんことを念願するものである。切り取られて花瓶にさされた一輪の花が樹上に群る花よりも美しいごとく、また彫刻におけるトルソーが、全身において見出されえない肢節のみのもつ部分美を顕現するごとく。

(常用漢字・新仮名遣いに改めました) 

 

今の人々は、お金が最高。文化より娯楽。グルメや旅行にお金を使っても、本を買わないし美術館など行かないし勉強しないし。自分だけが得をしたいと思っているし(はなはだしいのは政治家)。

昔の日本は豊かだったなあと思います。

それにしても、「自然の花より花瓶にさされた花の方が美しい」とは! 人類が作り出す文化に対する誇りに満ちあふれていますね。

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