2009年1月15日

第50回 光の復活:光・陽だまり・夕暮れ・数の花

第50回【目次】
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    * 漢文
    * 散文
    * 近現代詩
    * 唱歌・童謡
    * みやとひたち






第50回 光の復活

1 冬夜読書

    雪擁山堂樹影深
    檐鈴不動夜沈沈
    閑収乱帙思疑義
    一穂青燈万古心
              「冬夜読書」菅茶山 
    雪は山堂を擁して樹影深く、
    檐鈴(えんれい)動かず夜沈沈(ちんちん)たり。
    閑(しづか)に乱帙(らんちつ)を収めて疑義を思ふ、
    一穂(いつすい)の青燈(せいとう)万古(ばんこ)の心
                         
  しんと冷えた冬の夜、山中読書している堂は雪に覆われて、あたりの木々も黒々と雪景色に沈んでいる。風もなく檐端の風鈴も鳴らず、静謐のうちに夜は更けて行く。興のおもむくまま次々と開いて取り散らかした書物を片付けて、よく分からないところを考えていると、穂の揺らめくような細く青い燈火は、千万年にも通う心を照らし出す。

  外は厳しい季節を象徴するような無彩色の世界、室内は燈火一つで豊かに色のある情景です。人間に理性があることの幸福、学問の幸福を思い出させる一篇です。
    
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                                           21.1.4   東京都清瀬市

  二十四節気の「小寒」(今年は1月5日)から寒に入り、今年は20日が大寒になります。一年で最も寒さの厳しい時期にさしかかります。折しも現在日本列島の上空にはマイナス36度という強い寒気が訪れて、TVで見れば青森は吹雪の注意報。北国は大雪になっています。しかし、この厳寒の季節ほど、夜の静けさや日月星燈火、あらゆる光の美しさが心にしみる時期はありません。そして、厳しい寒さは人間の理性や信念を試し、時に鍛え支えることもする自然の師であったりしました。
  新井白石は、自伝に9才の冬のこととして次のような思い出を記しています。

  (父上は日課として)「日のうちには、行・草の字三千、夜に入りて、一千字を
 限りて書き出すべし」と命ぜられたり。冬に至りぬれば、日短かくなりて、課いまだ
 みたざるに、日暮れんとする事たびゝゝにて(沈む夕日を追って室外の西向きの
 縁側に机を出して続きに励んだ。)
 また夜に入りて手習ふに、睡(ねぶり)の催して堪へがたきに、(中略)水二桶づゝ
 かの竹緑に汲みおかせて、いたくねぶりの催しぬれば、衣ぬぎすてゝ、まづ表の
 水をかけて、衣うちきて習ふに、初めひやゝかなるに目さむる心地すれど、しばし
 程経ぬれば、身あたゝかになりて、またゝゝねぶくなりぬれば、又水をかくる事
 さきの事のごとくす。二たび水をかけぬるほどには、大やうは課をもみてたりき。
                           「折りたく柴の記」

  少年時代から誠実で忍耐強い人であったことが窺われます。白石の学問は冬に鍛えられたのです。 
     
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                                         メジロ 21.1.11   東京都清瀬市

2 光の復活
      
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                                      21.1.11   東京都清瀬市柳瀬川水面

  1月は「往(い)ぬ」、2月は「逃(に)ぐ」、3月は「去(さ)る」と、時間の経つのが早いことを月の頭の音に懸けて昔の人は言いました。年が改まっての半月は、確かにあっという間に過ぎました。気がつくと日も長くなっていますね。
  この10日過ぎには日の出の時刻も早まる方向に折り返して、朝7時というとかなり明るくなりました。空気が冴えている分、冬の陽光はひとしお明澄に感じられます。かつて白石は勉強の明かりを求めて夕日を追いかけましたが、我が家の猫殿はいちにち陽だまりを追いかけて過ごします。寒さの中、猫でなくとも日差しは嬉しいこの頃です。

  しかし、太陽の復活がもっと実感されるのは日暮れです。午後5時が真っ暗だった12月後半には夕方がありませんでした。暮れる空の色を見ながら何ごとか思うだけの時間があると無いとでは、一日ののどかさがずいぶん違うような気がします。

  春は近づいて参りました。

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                                         21.1.2   東京都清瀬市柳瀬川
     
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                                            21.1.5   東京都清瀬市
 

【文例】 漢詩

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