第46回 露:初霜 紅葉 露 白露
第46回【目次】
第46回 露:初霜 紅葉 露 白露
1 紅葉の季節
20.11.14 新座市野火止平林寺
朝晩がめっきり寒く感じられるようになると、街にもそろそろ紅葉がやって参ります。秋が深くなったなと胸に沁みる季節です。自然の推移をかなり忠実に映している『古今和歌集』の配列では、秋歌の後半(巻五)の題材がほとんどすべて紅葉です。色づき、盛りに照り映え、散り過ぎて秋が行く。紅葉の推移は秋終盤の季節そのものを辿ることになるのでしょう。
今年はどちらの地方も台風の直撃が比較的少ない年になり、木の葉が傷んでいないので紅葉がとりわけ美しく見られるであろうと聞きました。さあ如何でしょう。
20.11.14 新座市野火止平林寺
清和天皇の頃の歌にこんな作があります。
おなじ枝を分きて木の葉のうつろふは西こそ秋のはじめなりけれ
『古今和歌集』255 藤原勝臣
一本の木でありながら、西と東とが一様ではなく西から色づき始めたというのを詠んだものです。中国の慣用で東は春の方位、南は夏、西は秋、北は冬を象徴しました。この歌はそれに倣って秋は西から来るのだという考え方を詠んだのです。詩歌では西風は秋風のことだとは以前お知らせしたとおりです。
また、『万葉集』でも『古今和歌集』でも、早い紅葉は露とともに詠まれます。古代には、秋の冷たい露が木々に降りて、紅葉という不思議な現象を進めるのだと考えられていたようです。露が葉を赤や黄色に染めるという感じ方です。
20.11.14 新座市野火止平林寺
白露の色はひとつをいかにして秋の木の葉を千々[ちぢ]に染むらん
『古今和歌集』257 藤原敏行
しらつゆも時雨もいたくもるやま山は下葉残らず色づきにけり
『古今和歌集』260 紀貫之
などと詠まれています。さらに寒さが増すと、露は霜になり、時雨は凍って雪になります。二十四節気の「立冬」はすでに過ぎました。次の節気は「小雪(しょうせつ)」です。今年のカレンダーでは11月22日がその日にあたります。
20.11.14 新座市野火止平林寺