2008年10月15日

第44回 満ちる秋:秋の風物、九月十三夜

第44回【目次】



第44回 満ちる秋:秋の風物、九月十三夜


1 秋がある


                   20.10.12 東京都清瀬市

    ゆれてるすすきに 秋がある
    さらりとしている 秋がある
    とびたつイナゴに 秋がある
    さびしいみどりの 秋がある
    友と歩く 友と歩く
    その足音にも 秋がある



                 20.10.13 東京都清瀬市柳瀬川堤  

    誰かを呼ぶ手に 秋がある
    答える返事に 秋がある
    流れる小川に 秋がある
    浮いてる木[こ]の葉に 秋がある
    友と唄う 友と唄う
    その唄声にも 秋がある


                   20.10.12 東京都清瀬市

    遠くのけむりに 秋がある
    消えてく色にも 秋がある
    ただよう匂いに 秋がある
    静かにしみこむ 秋がある
    友と仰ぐ 友と仰ぐ
    その青空にも 秋がある

         サトウハチロー「どこにも秋がある」より

  この歌詞に響き合うように、心のどこかから思い出される歌がありませんか。同じ作者の「小さい秋みつけた」です。詩の内容は「小さい秋見つけた」から 季節が進んで、耳を澄まし目を凝らして探さなくても「どこにも秋がある」時期、あたりにすっかり秋が満ちた頃の歌です。ちょうどそんな季節になってまいり ました。

2 長月十三夜


            長月十三夜  20.10.13 東京都清瀬市

     みるひとの こゝろごころに
     まかせおきて 高嶺にすめる
     あきのよの月
               『唯心房集』第六十六「四季の月」より 第3聯(秋の月)

  陰暦九月十三夜は「後の月」と呼ばれて、古くから、仲秋の名月の次のもう一度のお月見をした月です。お月見はもともと収穫の感謝に関わる習俗であった ようです。八月十五夜はサトイモなどを供えることが多いので別名「芋名月」と呼ばれ、九月十三夜は「栗名月」「豆名月」などと呼ばれています。栗や豆を月 に、また神棚などに供えたことに拠る命名です。「小麦名月」と呼ぶ地方もあります。これはお供えするのではなく、陰暦九月十三夜のお天気で翌年の小麦の作 柄を占う習慣から来たものです。

  八月十五夜のお天気はあまりすっきりしない夜空であることが多く、その月が晴れますようにと願う詩歌があり、また雨降りを嘆く歌も少なくありません。 それに対して九月十三夜は気象上安定して晴天が多かったようで、「十三夜に曇りなし」という言葉が知られています。今年の陰暦九月十三日は現行暦では10 月11日でした。満月は15日でしたので、天象上の十三夜は13日夜ということになりましょう。たしかによく晴れた夜空にくっきりと明るい清楚な月を見た ことです。


                   20.10.12 東京都清瀬市

  空気の匂い、空のさま、静かにしみこむ秋の進行は着々です。早い紅葉は街の中にも始まっています。
  二十四節気でいう「寒露」が過ぎ、次に来る節気はもう「霜降」です。今年は10月23日がその日にあたります。朝夕はめっきり冷えるようになったこの頃、私の周りは風邪引き流行(ばやり)です。季節の変わり目、皆さまどうぞお体をおいとい下さい。
(20.10.15)



                               20.10.5 埼玉県所沢市

【文例】和歌

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