2010年1月23日

第74回 寒中: 大寒 山茶花 椿 雪 霜

第74回【目次】          1doku3 jpg .jpg      
    * 漢詩
    * 和歌
    * 訳詩・近現代詩
    * 唱歌・童謡  
    * みやとひたち



        
20群雀.jpg                                      仲良しの雀 22.1.20 東京都清瀬市


1 一番寒い時期

  今年は1月20日が二十四節気で言う「大寒」でした。「冬至」の次の節気が「小寒」、その次が「大寒」、その次には「立春」を迎えるのですから、冬の寒さの最も厳しい時期がこの「大寒」の時期ということになりましょう。

  二十四節気をさらに5日ずつに三分割した七十二候というものがあることは以前に御紹介しました。七十二候は二十四節気と同様「立春」から始まりますから、「大寒」を三つに分ける候は、もう最後の三候(第七十候、七十一候、七十二候)です。ここに一言ずつ添えられている言葉は、さらりと季節感を漂わせてなかなか面白いものです(※)。

   大寒の初候: 第七十候(1月20日〜) 款冬華(ふきのはなさく)
   大寒の次候:第七十一候(1月25日〜) 水沢腹堅(さわみづ こほりつめる)
   大寒の末候:第七十二候(1月30日〜) 鶏始乳(にわとり はじめてとやにつく)

  蕗の花が咲く、つまり蕗の薹(とう)が顔を出し、花が咲くということです。けれどもまだ沢には氷が張りつめている。最後の「(鶏)とや[鳥屋]につく」は、産卵のために巣に入るという意味です。いかがでしょう。およそ今頃の感じがするでしょうか。

        
27寒椿.jpg                                           20.3.27 東京都清瀬市


  回りを見わたすと、大方はまだ冬枯れの木々の中に、寒椿や山茶花ばかりは寒そうでもなく元気に咲いています。中国の詩でも極寒の時期の花の歌というと、椿と寒梅が主な題材です。
  この椿の仲間は本来暖かい地域の植物で、我が国はその北限になるのだそうです。それが、ほかの花が休んでいる寒中に盛んに咲いているのは不思議な気がいたします。

    寒い日だ
    山茶花のおおきな木が
    いっぱい花をつけている
    美しく気を張っているらしい
                 八木重吉

  寒気の中に鮮やかに咲くこの美しさを、気を張っていると詩人は見ていました。詩人の看取る山茶花は、健気な、一所懸命の咲き方です。それはもちろん、詩人自身の心持ちがそう見せるのでありましょう。


  一番寒い時期ということは、言い換えればここが寒気の底。これから次第に暖かさが増し、季節は春に向かいます。そういえば、日足はずいぶん延びて来ましたね。光も強くなり、よく晴れた日は、冴えた空気に日差しが眩いばかりです。寒さは厳しいものの、何かしら希望の感じられる時期でもあります。

          
22白梅枝2.jpg                                           22.1.22 東京都清瀬市

 ※七十二候各日付は平成22(2010)年におけるもの。
  「七十二候」の記述は諸本あるなかで、「伊勢神宮略本暦」(明治年間の本)
  に記載のものを採用。日本の動物・植生・気候に合わせて改訂が加えられたもので、
  中国のもとの七十二候の記述とは不一致の箇所が多い。

        
22山路1.jpg                                           22.1.22 東京都清瀬市


【文例】 漢詩

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