新年猫事情:猫語習得の試みなど
1庭のお客
歌うジョウビタキ 22.1.9 東京都清瀬市
冬枯れの我が家の庭には今年もジョウビタキが遊びに来ています。人なつこく人の近くまで来る、可愛らしい顔をした雌鳥です。去年いたのと同じ鳥だろうと家族と話しています。
ジョウビタキは渡り鳥です。スズメより一回り大きい程度の小鳥ですが、海を越えてシベリアまで渡るのですから驚異的な翼です。その長旅を無事にこなし、忘れずにまたここを訪れてくれたかと思うと嬉しくなります。
ジョウビタキのほかに、このところは数羽のメジロも来て、花もない庭が結構にぎやかです。その上、日当たりの良い時間は猫のお客も絶えません。
タヌキチ君は相変わらずです。年末年始もお休み無くほぼ毎朝現れ、依然としてかなりの時間をここの濡れ縁で過ごしてゆきます。秋の頃に御紹介したロシアンブルー母から生まれた三きょうだいは、そのまま地域猫となって御近所のお馴染みになりました。
縞々のやんちゃ顔の子で、私たちがはじめコトラ吉君と呼んでいた猫は、同じ御町内にF・コトラちゃんがいるのと紛らわしいので、チョロンと改名。名が体を導いたのか、いたづらっ子の度合いを増したように見えます。アメリカンショートヘアのような木目調の渦巻きが体側にくっきり見えるきれいな仔猫はそのままウズちゃん、以前この場所でノラ子ちゃんと御紹介した駐車場で遊ぶ三毛柄の女の子はモミヂという呼び名が定まってきたところです。
車のルーフで遊びまくっていたモミヂちゃん、毎日庭にも来ています。
こんなに大きくなりました。
"ンニャ?"
元祖コトラちゃんは柿の木で爪研ぎして帰ります。
もともとこのあたりは猫を飼っているお宅が多い上、チョロンのきょうだいのような地域猫までいるので、猫の人口密度(?)は高いのです。大勢いればとかく揉め事も起きるのでしょう、この頃は外に猫の諍(いさか)う声が珍しくありません。聞きつけると、みやとひたちは窓際に飛んでゆき、額をくっつけて外を窺っています。
よく寝ているように見える時もこの声がすると飛び起きますから、よほど刺激的な音声なのだと思われます。
何と言っているのでしょう。その声、言葉は、猫なら誰にも同じように伝わる言語なのでしょうか。そもそも、猫はどの猫も皆同じに話ができるのでしょうか。方言はないのでしょうか。茨城生まれのひたちと埼玉生まれのみやに通じる"言葉"があるのでしょうか。さらに、外国の猫と出逢った時に発声でコミュニケーションはとれるのでしょうか。そんなことを、これまでにも折々思うのでしたが、たまたま本屋さんで猫語を習得するという本を見つけました。
ナニ?
2『ネコと話そう』
以前"ミャウリンガル"という猫語翻訳機が話題になった時期がありました。残念ながらまだ実物を見たことがありません。しかし、もしこれが通用するというものならば、猫には音声で表されるそこそこ共通の言語があり、それは学べば使えるようになるはずである、ということの傍証になるでしょう。
そこで、『ネコと話そう』(野澤延行、マガジンマガジン刊)です。
この本は獣医さんが猫の鳴き方60種類を分類整理してその意味とその時の猫の心理を解説したものです。音を再現するために、カタカナ書きの言葉にローマ字表記で音声を表し、色分けしてアクセントの位置を示し、そこにさらに音程の上げ下げの記号と、音楽で用いる強弱の記号(pやmp、f、mfなど)が加えてあります。
どんな言葉が書いてあるかというと、
ネコ語-1 ニャー:nya- これにはmp(メゾピアノ)の記号がnの上に付いています。
意味は「ネコです」「やぁ」
本当ですか!
ちょっとどうかなとは思うものの、まあそれでも通りそうな気もします。
そこで、みやがよくやる「フッ」という音の無い言葉、鼻息のような音は載っていないかと見ると...、ありました。
ネコ語-40 フッ:futt これにもfの上にmp(メゾピアノ)の記号が付いています。
意味 「さてと」「よしっ」
本当ですか!!
みやがこれを発する時はどちらかというと、「フンッ」といった荒々しい不機嫌を示しているように見えるのですが。記号をよく理解すると、ここにあるのはそれとは違う音、違う言葉なのでしょうか。
" フッ"
この本の最も眼を引くところは、猫の言葉を理解するだけではなく、こちらも猫語を習得し、猫と話そうという目的が明らかなことでしょう。そのために記号を駆使して音声の再現を助けているわけです。そもそもこの本を買ってみようと思いついたのは、御近所の猫のたびたびの喧嘩声を聞くにつけ、仲裁ができないものかと考えたからであります。
しかし、実際発音してみようとするとなかなかたいへんです。お手本のCDでも付いていないと、これでいいのかどうかまことに不安です。アクセントや高低のちょっとした違いで、「このネコ野郎!」なんて言葉になるとしたら、仲裁どころではありません。まずは、"ニャッ ニャッ(nyatt nyatt)"「いい日だな」くらいの無難な挨拶ができれば散歩に使えそうなのだけれど、などと思いながら、「ニャッ ニャッ」の練習していると、みやとひたちが駆けつけてきて、小首をかしげて熱心にこちらを見つめます。
ナニ?
それだけではありません。窓際で練習していると、外のタヌキチ君や庭の常連F・ミミちゃんもじっとこちらを見つめます。もしかすると、上手ではないなりに猫語になっているのでしょうか。
少し時間を掛けてみて、猫語習得については改めて御報告いたしましょう。