雨猫
散歩コースの川ではカルガモの雛が日に日に成長しています。いつも見ている家族ははじめ9羽の雛を連れていましたが、いつの間にか1羽欠けました。
今日は散歩の途中たまたまこの一家に別の一家が遭遇した場面に行き会いました。まだ毛糸玉クラスの3羽の雛を連れていました。川の上流と下流とからやって来て、進行方向に相手の姿を捉えていたはずですが、除けずに進んで来るのは挨拶でもするのかと思うととんでもないこと、出会い頭に激しい闘いが始まりました。
親ガモ二羽はけたたましい声を挙げて突き合い翼で打ち合い、水上を走り回るように速く動きます。一旦離れたかと見るとまた走り寄っては打ち合い突き合い、どちらもいやになるくらい執拗です。
その争いはかなり続きました。川の真ん中の喧嘩で止めようがありません。カメラマンと一緒にいましたが、ハラハラして写真も撮れないありさまでした。その間二組の子供達はそれぞれのきょうだいとひと塊になって川面に漂い、じっと待っています。好き勝手にあちこち行くものは最後までありませんでした。
自然界にカルガモが分け与えられている席は限られているのでしょう。その一定の個体数に入るために、同じ種同士で数を削り合う闘いもあるのだと、目の当たりに分かりました。せめてもの救いは激しい攻撃が相手の子供には及ばなかったことだとカメラマンと語り合いましたが、考えてみると、親ガモが死に、あるいは傷ついて子供を守れなくなってしまったら、その子供たちは早晩全滅でしょう。親を攻撃する方が効率よく数を減らすことになるのです。
途中、対岸から水の上をゆっくり滑るように渡って来た蛇は明らかに子ガモを目指していました。それがあったのか、喧嘩は急にあっさり中断されて、二家族はそれぞれ少し離れた岸に上がり、そのままになったようでした。
川を見下ろす木の上に巣を掛けているカラスは「カーワイー、カーワイー」と我が子の子育てに夢中ですが、折々小ガモを攫うと言います。川沿いにはカラスサイズの大鳥はほかにもいます。天敵を躱(かわ)し、また同族との闘争に勝ち抜かなければ死んでしまう。なんと厳しい世界でしょう。
生存を賭けた闘いを思って、切ない気分で朝の散歩から家に帰りました。
仕事帰りの時間ですと、ふたりがバラバラと玄関に迎えに出てくるのですが、梅雨時のこんな朝方は静かです。
オ帰リ アトデ ビンチョーマグロ 食ベルカラネ
みやはまだ自分の寝籠にいて、顔だけちょっと出してまた寝ました。ひたちを探すと、こちらはちゃっかり子供の寝床にいました。
ゴ飯ニ呼ンデネー
雨や曇りの日はいつにもましてよく寝る猫族。梅雨は雨休みです。
寝てます 寝てます
何をしていても睡くなる
何をしていても睡くなる
ここの争いは、せいぜいお刺身の取り分とか好きな椅子の奪い合いです。生存の懸かっていない争いは、結局わがまま勝手というものなのだな、とよくわかりますね。気楽に"コラ!"と言えるわけです。
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