墨場必携:和歌 ももの花
梅にメジロ 21.2.28 東京都清瀬市柳瀬川
はるのそのくれなゐにほふもものはな
した照るみちにいで立てるいも(妹)
家持集35 大伴家持
※春の苑くれなゐにほふ桃の花下照る径にいでたつ郎子[をとめ]
(『万葉集』所収)の本歌。
第五句 いも:愛しい人、恋人、妻
うれしくも桃のはつはな見つるかな
またこむはるも定めなき世に
公任集13 藤原公任
みちとせになるといふももの ことしより
はなさくはるにあひそめにけり
『和漢朗詠集』44 坂上是則
みちとせになるてふもものことしより
花さく春にあひにけるかな
『拾遺集』288 凡河内躬恒
あ(飽)かざらば千世まてかざせ桃のはな
はなもか(変)はらじ春もたえねば
『後拾遺和歌集』129 清原元輔
ものいはばとふべきものをもものはな
いくよかへたる(幾世か経たる)たきのしらいと
『後拾遺集』1056 弁の乳母
垣ごしに枝さしかはすもものはな
誰(たれ)もちとせをかさねてや見む
『永久百首(永久四年百首)』85 源顕仲
はるがすみたちかくさなむみちのべの
かきねに咲けるひめもものはな
『永久百首(永久四年百首)』89 兼昌
わがそのの もものはつはなさきにけり
みちよ(三千世)すぐべき春のしるしか
『永久百首(永久四年百首)』90 京極関白家肥後
みちよへむ はるをしれとてもものはな
君がそのにぞ まづさきにける
『永久百首(永久四年百首)』91
翡翠 21.3.1 東京都清瀬市柳瀬川
ことりどものうたよみける中に
ももその(桃苑)の 花にまがへるてりうその
むれたつをりは ちるここちする
山家集1400 西行
※うそ(鷽):スズメよりやや大きい小鳥。雄は照鷽(てりうそ)、
雌は雨鷽(あめうそ)と呼ばれる。
うゑおきししづのこころを もものはな
やよひのけふぞ 見るべかりける
壬二集313 家隆
さらばまた やよひのみかのつきのかげ
はやさしそへよ もものさかづき
『為尹千首』159 飛鳥井雅縁
桃花
うゑおきて花さへ春を三ちとせに
なるてふ桃のよはひをぞしる
草根集1678 正徹
三月三日
まちけめや弥生の三日の水の上に
うきたる鳥の春のさかづき
草根集1688 正徹
21.3.1 東京都清瀬市柳瀬川
桃花曝錦
花さけば錦かけほす桃ぞのの
春のふる宮 人しなけれど
草根集1689 正徹
からもものはな
あふからも ものはなほこそかなしけれ
わかれむ事をかねて思へは 『古今和歌集』429 清原深養父
※いわゆる「隠し題」と呼ばれる遊び歌。題「からもものはな」の七文字が、
歌の表の意味とは直接関係なく、第一句の途中から第二句にかけて詠み込まれている。
【文例】 散文へ