墨場必携:和歌 柿本人麻呂『万葉集』3305...
【文例】
[和歌]
・桜花 盛少女[さかえをとめ] 汝[な]をぞも 吾に寄すとふ
吾をぞも 汝[な]に寄すといふ
柿本人麻呂『万葉集』3305
・照りもせず曇りもはてぬ春の夜の
朧月夜にしくものぞなき
大江千里『古今和歌集』55
・桜こそ思ひ知らすれ
咲きにほふ花も紅葉[もみぢ]も常ならぬ世を
『源氏物語』総角 薫の歌
・吹く風を勿来[なこそ]の関と思へども
道も狭[せ]に散る山桜かな
源義家『千載和歌集』
・ささ波や志賀の都はあれにしを
昔ながらの山桜かな
平忠度『平家物語』巻七 忠度都落
・行きくれて木の下蔭[したかげ]を宿とせば
花や今宵の主[あるじ]ならまし
平忠度『平家物語』巻九 忠度最期
・八重[やへ]にほふ軒端の桜うつろひぬ
風よりさきに訪[と]ふひともがな
式子内親王『新古今和歌集』137
・散る花はまた来む春も咲きぬべし
別[わかれ]ばいつかめぐり会ふべき
少将脩憲[ながのり]『山家集』
・ふりまがふ桜色こき春風に
野なる草木のわかれやはする
西行『山家集』
・山の調[しらめ]は桜人[さくらびと]
海の調は波の音
又嶋廻るよな
巫女[きね]が集ひは中の宮
厳粧[けさう]遣戸[やりど]は此処[ここ]ぞかし
『梁塵秘抄』323
◎ここの「桜人」は催馬楽[さいばら]の曲名。植物の桜ではない。
・花鎮め[はなしづめ]
や とみくさのはなや
やすらひ花や
や とみをせばなまへ
やすらひ花や
や とみをせばみくらの山に
やすらひ花や
や あまるまでなまへ
やすらひ花や
や あまるまでいのちをこはば
やすらひ花や
◎京都今宮神社鎮花祭(ちんかさい:花(桜)の霊を鎮めることで、春の流行病を
避けようとする祭祀)における祭り歌。平安時代末からの伝承。
「や」は囃子詞(はやしことば)
・桜花ふかきいろとも見えなくに
ちしほ[千入:千回染料に入れるの意から濃い色]に染めるわがこころかな
本居宣長
・花くはし桜もあれど
此のやどのよゝのこゝろを我はとひけり
明治天皇御製
◎形容詞「くはし」は美しいの意。
・桜ばないのち一ぱいに咲くからに
生命[いのち]をかけてわが眺めたり
岡本かの子
・花のごと土にし立たば
わがいのちおのづからなる色にし咲かむ
岡本かの子
・ゆめさらさら 歌に朽つべき身ならねど
かはゆきものは桜なりけり
与謝野鉄幹
・見わたせば人のこころもおぼろにて
無しともいへぬ花かげの鬼
石川淳
◎時代小説『修羅』に作中人物の合作として収録
[和歌]
・桜花 盛少女[さかえをとめ] 汝[な]をぞも 吾に寄すとふ
吾をぞも 汝[な]に寄すといふ
柿本人麻呂『万葉集』3305
・照りもせず曇りもはてぬ春の夜の
朧月夜にしくものぞなき
大江千里『古今和歌集』55
・桜こそ思ひ知らすれ
咲きにほふ花も紅葉[もみぢ]も常ならぬ世を
『源氏物語』総角 薫の歌
・吹く風を勿来[なこそ]の関と思へども
道も狭[せ]に散る山桜かな
源義家『千載和歌集』
・ささ波や志賀の都はあれにしを
昔ながらの山桜かな
平忠度『平家物語』巻七 忠度都落
・行きくれて木の下蔭[したかげ]を宿とせば
花や今宵の主[あるじ]ならまし
平忠度『平家物語』巻九 忠度最期
20.3.27東京都清瀬市
・八重[やへ]にほふ軒端の桜うつろひぬ
風よりさきに訪[と]ふひともがな
式子内親王『新古今和歌集』137
・散る花はまた来む春も咲きぬべし
別[わかれ]ばいつかめぐり会ふべき
少将脩憲[ながのり]『山家集』
・ふりまがふ桜色こき春風に
野なる草木のわかれやはする
西行『山家集』
・山の調[しらめ]は桜人[さくらびと]
海の調は波の音
又嶋廻るよな
巫女[きね]が集ひは中の宮
厳粧[けさう]遣戸[やりど]は此処[ここ]ぞかし
『梁塵秘抄』323
◎ここの「桜人」は催馬楽[さいばら]の曲名。植物の桜ではない。
・花鎮め[はなしづめ]
や とみくさのはなや
やすらひ花や
や とみをせばなまへ
やすらひ花や
や とみをせばみくらの山に
やすらひ花や
や あまるまでなまへ
やすらひ花や
や あまるまでいのちをこはば
やすらひ花や
◎京都今宮神社鎮花祭(ちんかさい:花(桜)の霊を鎮めることで、春の流行病を
避けようとする祭祀)における祭り歌。平安時代末からの伝承。
「や」は囃子詞(はやしことば)
20.3.27東京都清瀬市
・桜花ふかきいろとも見えなくに
ちしほ[千入:千回染料に入れるの意から濃い色]に染めるわがこころかな
本居宣長
・花くはし桜もあれど
此のやどのよゝのこゝろを我はとひけり
明治天皇御製
◎形容詞「くはし」は美しいの意。
・桜ばないのち一ぱいに咲くからに
生命[いのち]をかけてわが眺めたり
岡本かの子
・花のごと土にし立たば
わがいのちおのづからなる色にし咲かむ
岡本かの子
・ゆめさらさら 歌に朽つべき身ならねど
かはゆきものは桜なりけり
与謝野鉄幹
・見わたせば人のこころもおぼろにて
無しともいへぬ花かげの鬼
石川淳
◎時代小説『修羅』に作中人物の合作として収録
20.3.31東京都清瀬市柳瀬川堤