墨場必携:漢詩 初冬
・初冬月夜過子俶(初冬の月夜子俶[ししゆく]に過[よぎ]る)
清 呉偉業
月色破林巒
貧家共一灘
門開孤樹直
影逼両人寒
瀹茗誇陽羨
論詩到建安
亦知談笑久
良夜睡応難
月色[げつしよく]林巒[りんらん]を破り
貧家一灘[いちだん]を共にす
門開かれて孤樹[こじゆ]直く
影逼[せまつ]て両人寒し
茗[めい]を瀹[に]て陽羨[ようせん]を誇り
詩を論じて建安に到る
亦[ま]た知る談笑の久しきを
良夜 睡[ねむ]り応[まさ]に難[かた]かるべし
明るい月が山の上にさし出るころ、
清貧の子俶の家に来てみると、早瀬のかたわらにあった。
私を迎えて開かれた門の前には一本の樹がまっすぐに立っていて
月影が枝越しにさしこみ、二人を寒々と照らす。
茶を煮ては、陽羨の銘茶を味わい、
詩を論じては、建安の風骨ある詩を良しとする。
こうして談笑がいつまでも続くうえは
このようなすばらしい夜、眠ることはできないだろう。
20.12.3 東京都清瀬市
20.12.5 東京都清瀬市柳瀬川
20.12.5 東京都清瀬市柳瀬川
・山中月(山中の月)
南宋 真山民
我愛山中月
烱然掛疎林
為憐幽独人
流光散衣襟
我心本如月
月亦如我心
心月両相照
清夜長相尋
我は愛す 山中月
烱然[けいぜん]として疎林[そりん]に掛かるを
幽独[いうどく]の人を憐れむが為に
流光 衣襟[いきん]に散ず
我が心 本[もと]月の如く
月も亦[ま]た我が心の如し
心と月と両[ふた]つながら相[あひ]照らし
清夜[せいや]長[とこし]へに相[あひ]尋[たづ]ぬ
私は山中の月を愛す。
葉の落ちた林の上を明るく照らしているのを。
隠士を憐れむかのように、
その光は襟の辺りを照らす。
私の心はもとより月のようであり、
月もまた私の心。
心と月とがともに照らしあって、
この清らかな夜、いつまでも賞[め]であうのだ。
20.11.13 東京都清瀬市
清 呉偉業
月色破林巒
貧家共一灘
門開孤樹直
影逼両人寒
瀹茗誇陽羨
論詩到建安
亦知談笑久
良夜睡応難
月色[げつしよく]林巒[りんらん]を破り
貧家一灘[いちだん]を共にす
門開かれて孤樹[こじゆ]直く
影逼[せまつ]て両人寒し
茗[めい]を瀹[に]て陽羨[ようせん]を誇り
詩を論じて建安に到る
亦[ま]た知る談笑の久しきを
良夜 睡[ねむ]り応[まさ]に難[かた]かるべし
明るい月が山の上にさし出るころ、
清貧の子俶の家に来てみると、早瀬のかたわらにあった。
私を迎えて開かれた門の前には一本の樹がまっすぐに立っていて
月影が枝越しにさしこみ、二人を寒々と照らす。
茶を煮ては、陽羨の銘茶を味わい、
詩を論じては、建安の風骨ある詩を良しとする。
こうして談笑がいつまでも続くうえは
このようなすばらしい夜、眠ることはできないだろう。
20.12.3 東京都清瀬市
20.12.5 東京都清瀬市柳瀬川
20.12.5 東京都清瀬市柳瀬川
・山中月(山中の月)
南宋 真山民
我愛山中月
烱然掛疎林
為憐幽独人
流光散衣襟
我心本如月
月亦如我心
心月両相照
清夜長相尋
我は愛す 山中月
烱然[けいぜん]として疎林[そりん]に掛かるを
幽独[いうどく]の人を憐れむが為に
流光 衣襟[いきん]に散ず
我が心 本[もと]月の如く
月も亦[ま]た我が心の如し
心と月と両[ふた]つながら相[あひ]照らし
清夜[せいや]長[とこし]へに相[あひ]尋[たづ]ぬ
私は山中の月を愛す。
葉の落ちた林の上を明るく照らしているのを。
隠士を憐れむかのように、
その光は襟の辺りを照らす。
私の心はもとより月のようであり、
月もまた私の心。
心と月とがともに照らしあって、
この清らかな夜、いつまでも賞[め]であうのだ。
20.11.13 東京都清瀬市
【文例】 和歌へ